
「ありのまま」を受け入れてくれた猫
私の子ども時代を支えてくれたのは、物語と猫でした。
物語は、狭い田舎町の風景しか知らなかった私を、さまざまな場所や時代へと自由にはばたかせてくれました。
そして、猫――おもに野良猫――は、家で動物を飼うことのできなかった私にとって、とても特別な存在でした。私はこの猫という獣の不思議な魅力に取りつかれていました。どれだけ見ていても飽きることがないし、ただ「猫がそこにいる」という事実だけで、どんな贈り物をもらったときよりも満たされたものです。
「物語」と「猫」。どちらにも共通していたのは、ありのままの私を受け入れてくれたということです。子ども時代、友達とうまくいかなかったり、嫌な思いをしてしまうことはしょっちゅうでした。嫌われたくないけれど、どうふるまうのが正解なのかがわからない。わからないからいつもびくびくおどおどして、人の目ばかり気にしてしまう。そんな子どもだったのです。
けれど、物語と猫は、私に何かを強制したり、あざ笑ったりすることはありませんでした。ありのままの私を認めてくれて、ただここに存在するということを受け入れてくれる。その心地よさと安心感は、正解などわからなくても生きていていいのだということを私に教えてくれました。
『アオくんは猫男子』の主人公・リンは、仲良しの猫の死をきっかけに友達とトラブルになり、ひとりぼっちになってしまいます。せめて猫を思いきりなでることができれば寂しい気持ちもまぎれるのだけれど、猫アレルギー発症によってそれも叶わず、ただただ「野良猫を眺める」という行為に
そんなリンが出会ったのが、同級生の男子・アオ。なんだか「猫っぽい」アオと関わることでリンがどのように過去の呪縛から抜け出すのか、読んで確かめていただければうれしいです。
(ななみ・まち)●既刊に「サキヨミ!」シリーズ(既刊12巻)など。
PHP研究所
『アオくんは猫男子 モフれる子、見つけた!?』
七海まち・著/ななミツ・イラスト
定価858円(税込)