
一番好きな鳥はツバメ
野鳥の観察を始めてから、早いもので三十年以上の月日が経ちました。はじめの頃は珍しい鳥を見たくて、会社の休日を利用しては、北海道から九州まで県外へとよく出かけました。しかし、気がつけば身近な鳥について、名前は分かっても生態については、ほとんど知りませんでした。だんだんと、遠出することが減り、身近で見られる鳥に興味が移っていきました。
その後、プロカメラマンになり、普段はカメラマンとして理科や社会科などの教材関係の写真を撮っています。小学校理科の教科書では、ツバメが取り上げられています。それで、自然とツバメを撮影するようになっていきました。ツバメを撮り始めた頃は、雄と雌の違いが分かる程度で生態に関しては全くといっていいほど知りませんでした。ましてや、本を作ろうとは思ってもいませんでした。しかし、何年か経つと、ツバメの写真がたくさんたまってきました。
そして、一冊目の本を二〇〇四年に、二冊目として『はばたけ! ツバメ』を出版できました。長年、ツバメと付き合っているうちに野鳥の中で、一番好きな鳥になっていました。
最近はツバメが減っているといわれ少し心配です。我が家の周りでは、もともと渡来数は多くありませんでしたが、今年は特に少なく、ほとんど見られなくなりました。原因はよくわかりませんが、自然環境の悪化も一因として考えられると思います。また、糞で家が汚れるのを嫌い軒下の壁にビニールシートを張ったり、ホースでツバメに水をかけたりして、巣を作らせないようにする人もいます。古来、人々から大事にされてきたツバメですが、価値観も多様になり、ツバメが巣をかけるのもたいへんになりました。
ツバメがヒナを育てていくためには餌となる昆虫がたくさんいる豊かな環境がないと、暮らしていくことができません。子どもたちが自然に触れる機会が減った今、身近で見られるツバメを通して、自然に関心を持つ子どもが一人でも多く増えることを願います。
(こうもり・まさひで)●既刊に「ツバメ観察記」『生きものをはぐくむ棚田の米づくり』『カモ類の観察』など。
そうえん社
『はばたけ!ツバメ』
孝森まさひで・しゃしんとぶん
本体1,100円