日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ひみつのたからもの』 豊福まきこ

(月刊「こどもの本」2024年4月号より)
豊福まきこさん

友だちになりたい

 子どものころ、どんなふうにしてお友だちを作ったんだっけ?

 私はとても引っ込み思案でおとなしい子どもでした。元気のいい男の子たちには怖くて近寄れず、友だちになるのは、部屋でおとなしく遊ぶ、もの静かな子が多かったです。そんなふうに不思議と自分と似た空気感を持つ子をかぎ分けていたように思います。

 その上で共通の話題があればもっとおしゃべりができるようになります。電車の好きな子、恐竜の好きな子。おままごとが好きな子、シールが好きな子。そういうお互いの好きなものが、より仲良くなれるきっかけになるのは、何も子どもだけではありません。大人も、釣りが好き、筋トレが好き。漫画が好き、旅行が好き。「アイドルが好きで推し活しています」などというと、そのジャンルで年齢も性別も超えた新しい友だちを作ることさえできます。

 今回、ネコの姿を借りて、二匹のネコが友だちになるお話を描いてみました。

 一匹のネコが、とある秘密を抱えています。なんとなく似たような秘密を持っていそうなもう一匹に話しかけたいのですが、どう声をかけたらいいかわからない。お互いのその秘密が共通項なのだけれど、秘密は隠したいから秘密なのであって、それに踏み込むのは勇気が要ります。

「君にだったら、ぼくの大事にしている秘密を話せそうな気がする!」

 相手の陣地に踏み込むには、自分が先に心の門を開かねばなりません。そういうときのドキドキ感。受け入れてくれるだろうかという期待と不安。でもそれを越えて友だちになれたときのうれしさ。こういう見えない壁を越えるのは子どものほうが上手です。あっという間に仲良くなる様は、見ていて爽快さを感じるほど。

 我が身を振り返っても、大人になってできなくなったことの最たるものが「友だちを作る」ではないかと思います。またあの頃のように、軽々と壁を乗り越えてみたい。そんな願いをこめて描いた一作です。

(とよふく・まきこ)●既刊に『わすれもの』『おどりたいの』『ただいま』など。

『ひみつのたからもの』"
BL出版
『ひみつのたからもの』
豊福まきこ・作・絵
定価1,650円(税込)