日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『優等生サバイバル』 キム・イネ

(月刊「こどもの本」2024年3月号より)
キム・イネさん

キラキラとキリキリ

「韓国の高校生って、こんなに勉強してるの?」という感想を聞かせてくれたのは、現在大学生の姪でした。「日本の高校1年生は、あんなに勉強してないよ」とのこと。

 本作は韓国の進学校が舞台のYA小説です。主人公のジュノは入学初日から大学受験に向けて勉強第一の雰囲気に圧倒され、不安ばかりの高校生活をスタートさせます。

 韓国の受験というと、毎年11月に行われる「大学修学能力試験」(日本の共通テストのようなものです)で、遅刻しそうな受験生を警察車両が試験会場まで送り届けたり、受験会場の正門前で後輩たちが応援する様子をニュースなどでご存じの方もいるかもしれません。

 なぜそこまで……と思うかもしれませんが、韓国では大学受験が人生を左右するとも言われているからです。

 不安な気持ちでスタートしたジュノの高校生活。親友、先輩、サークル仲間、家族との日々のなかで、どう変化していくのか。

 私の周りの大人世代は本書の読後感を「青春がキラキラしてる」と表現しました。一方で、冒頭で紹介した姪の、もう一つの感想は「最初のほうは、読んでいてキリキリした」でした。

「キラキラ」と「キリキリ」。登場人物たちが抱える悩み、不安、夢、悔しさ、妬み、憧れ……。それらすべてがまぶしい十代の特権でもあったと知っている世代の読後感と、それらの只中にいる若い世代の読後感。

 著者のファン・ヨンミさんは十代の子どもたちに寄り添い、エールを送る作家です。「キリキリ」の今が「キラキラ」になる、具体的なアドバイスが本書にはたくさん込められています。あ、もちろん、大人世代にも有効です。

 では私もエールを……と思って、さて何ができるか。まずは明日の朝、電車の中で一緒になった中高生に、心のなかで「キラキラになるからね!」と大声で叫ぶことにします。

●本書が初めての翻訳書。

『優等生サバイバル』"
評論社
『優等生サバイバル』
ファン・ヨンミ・作/キム・イネ・訳
定価1,650円(税込)