日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ようかいとりものちょう18』 大﨑悌造

(月刊「こどもの本」2024年2月号より)
大﨑悌造さん

時代劇や絵物語の魅力を子どもたちに

 拙著『ようかいとりものちょう』シリーズは、2023年で刊行十周年を迎えました。本項で紹介されている新刊は、通巻十八巻目にあたります。

 一巻目の構想を立てたとき、

「いまどき時代劇? しかも捕物帖?子どもに受けるわけないか。どうせ妖怪物をやるのなら現代が舞台だろ?」

 などと思いつつも、自分が幼少期から好きだった時代劇に挑んでみたいという身勝手な欲求を優先し、

「ま、売れなきゃ売れないで別にいいや。とりあえず好きなことをやろう」

 と開き直って書き始めました。

 それが、意外や意外、十年も続いたのは、熱心な読者と、我慢強く刊行を続けてくれた版元のおかげです。

 思えば私の幼少期(昭和三十〜四十年代)、児童向けの時代劇作品は、テレビ・映画・漫画・読み物などにあふれかえっていました。それがいまや、児童向けどころか、大人向け時代劇ですら存続が危ぶまれています。

 時代劇が、かつての隆盛を取り戻すことはもうないかもしれません。でも私は、たとえ微力でも、子どもたちにそのおもしろさを伝えていきたいと思っています。

 また本シリーズは、絵と文章を組み合わせた絵物語の体裁をとっています。これもいまでは、時代劇同様、絶滅危惧種と言えるでしょう。

 絵物語には、小説とも漫画とも絵本とも違う魅力があります。本シリーズに触れた読者が、少しでもそれを感じてくれれば嬉しいのですが……。

 さて、その十周年にスタートしたのが、新章となる「八眷伝篇」です。全八巻の予定で、元ネタは言わずと知れた滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』。

 ちなみに、私の名前に含まれる「悌」の字は、同作の愛読者だった父が、八犬士の一人からとったものです。その縁もあって、私自身、『八犬伝』は子どものころから大好きな作品でした。

 いつかあんな物語を書いて読者を楽しませたい! という長年の夢が実現した幸せを感じながら、続刊の執筆に励む今日この頃です。

(おおさき・ていぞう)●既刊「ようかいとりものちょう」(既18巻)、「ほねほねザウルス」(ぐるーぷ・アンモナイツ名義/既28巻)など。

『ようかいとりものちょう18』"
岩崎書店
『ようかいとりものちょう18』
大﨑悌造・作/ありがひとし・画
定価1,078円(税込)