
『ぎんいろのボタン』ではないけれど
私は今回出版された『ぎんいろのボタンとそらとぶそり』という絵本の文章を書きました。その前にこの本の前編ともいうべき『ぎんいろのボタン』という絵本も書きました。『ぎんいろのボタン』では、クマの園長先生が宝物を持っていて、それが銀色のボタンでした。園長先生が子どもの頃お母さんが作ってくれたお気に入りの服についていた古い銀色のボタンです。そのボタンをクマの園長先生が自分のマントにつけるとボタンが光りだし、マントが空飛ぶマントに早変わりするというものです。
実は、私が子どもの時、母は洋裁が好きで私のワンピースやブラウスなども作ることがありました。その母が持っていたのが缶の『ボタン入れ』でした。クッキーか何かの缶の中に、とにかくいろいろなボタンが入っていました。家族の古くなった服についていたボタンや取れてしまったボタンなど、大人の服のボタンから子どもの服のボタンまで入っていました。母にしてみれば、ボタンを再利用しようとして缶に入れて取っておいたものだと思います。
私はその缶を開けてボタンを見るのが好きでした。大きなボタン、小さなボタン、いくつか揃ったボタン、一つだけのボタン、とにかく大きさも色も素材もまちまちのボタンがごちゃ混ぜに入っていました。
私はというと自分で服を縫ったりはしませんが、もし今、あの『ボタン入れ』があったなら、いろいろなボタンを布の上に並べて縫いつけ、壁に掛けるオブジェを作ってみたいなあと思っています。残念ながらクマの園長先生の宝物である不思議な力を持つ銀色のボタンは存在しませんが、自分の気に入ったボタンを並べて作るオブジェは、作っている過程でも、できあがったものを眺めることでも、きっと私を楽しませてくれるに違いありません。
この絵本を読んでくれる子どもたちにも、お話を大いに楽しんで、どんなものでもいいので自分が楽しめるものをぜひ見つけて欲しいと思います。
(さこん・らんこ)●既刊に『ぎんいろのボタン』(末崎茂樹/絵)、『ねずみくんのだいすきなもの』(いもとようこ/絵)など。
ひかりのくに
『ぎんいろのボタンとそらとぶそり』
左近蘭子・作/末崎茂樹・絵
定価1,485円(税込)