日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『まるごとうちゅうカレー』 チョーヒカル

(月刊「こどもの本」2024年1月号より)
チョーヒカルさん

想像力で常識を覆せ

 この絵本を人に説明するのは難しい。「色々な惑星を料理して、カレーを作るんです」というと、ポカンとされる。惑星は食べられないし、ガスでできていたり凍っていたり、カレーになんてなるわけがない。そんな顔をされる。だけどだからこそ、この絵本を読んで欲しくなる。

 私は昔から食べたことがないものを食べるのが好きだ。珍味や知らない国の食べ物、見た目から味が想像できないものをドキドキしながら口に運び、自分の持っている価値観が更新される瞬間が楽しくてたまらない。

 衝撃的だった食べ物にバロットがある。フィリピンなどで食べられている茹でたアヒルの卵で、割ると中にはなんと成長途中の雛が見える。まだ鳥の形はしていないものの、血管や目、場合によっては羽毛が黄身と白身に混在している。割った穴からまずは汁を飲む。鶏ガラのような深い旨味と獣臭さがある。そこから、好みでお酢や塩をつけて本体を食べるという順序だ。骨の元だろうか、ポリポリした何かがあったかと思えば、羽毛らしきものがあったり、プルプルした白身も相まって食感のオーケストラだ。美味しいかと聞かれるとそんなに好みではないのだけれど、なんとも楽しい経験だった。

 そんな話を人にすると「絶対無理!」と言われることが少なくない。生き物の形がダイレクトにわかる=グロテスクであるという常識ができあがってしまっていると、それを覆すのは難しい。だけどバロットは決してグロテスクなだけの食べ物ではない。現地ではおつまみとして愛されていたり、栄養価が高く美肌効果もあるのだとか。常識だって、国が変わればいくらでも変わるくらい流動的なのだ。常識と恐怖で、私たちはその奥の面白いものを逃してしまう。そんなのもったいなくはないか。

 実際の惑星は食べるなんて不可能なのかもしれない。だけどもしかしたら月を割ってキラキラ新月の目玉焼きを作ることができるかもしれない。常識に想像力でヒビを入れるのは楽しい。

この絵本をよんでそんな気持ちになってくれたら最高だ。

●既刊に『じゃない!』『やっぱり じゃない!』『なにになれちゃう?』など。

『まるごとうちゅうカレー』"
PHP研究所
『まるごとうちゅうカレー』
チョーヒカル・作・絵
定価1,650円(税込)