日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『なんとかなる本 樹本図書館のコトバ使い①』 令丈ヒロ子

(月刊「こどもの本」2024年1月号より)
令丈ヒロ子さん

コトバの力をかりればなんとかなる

 言葉、ことば、コトバ。毎日コトバを使ってます。コトバに悩み、コトバで笑い、コトバに感激して暮らしています。こんなに毎日コトバのことを考えているのに、コトバが主人公になるようなお話を書いたことがないなあと、ある日気がつきました。

 小学生も中学生も、「ああ、もうなんとかしてくれ!」って言いたくなるような困りごとがあるだろう。

 そういう子どもたちをコトバが「なんとかなる」ように助け、前向きに生きる後押しをするお話はどうだろう?

 では、コトバと悩める子どもとをつなぐ役割は「コトバ使い」という術師がすることにしよう。

 もくもくと、お話の設定が夏の雲のようにわきあがり、すぐに大きく広がりました。

 自分の話したコトバが、えんぴつと消しゴムで、好きなだけ書き直せたり。忘れてほしい自分のコトバをみんなの記憶から消すことができたり。瀕死の飼いねことコトバが通じるようになったり。

 本当にこういうことができたらいいのにと思うようなコトバの術も次々に思い浮かびました。

(こんな術が使えれば、おもしろいし、原稿も楽しく早くできそう。)

 ところが実際、お話を書いてみたら、全然進みません。コトバの術が、作者の思い通りにならないのです。

 あせってコトバをねじふせようとすると、もっとお話がこんがらがる。

「コトバの力をかりれば、たいていのことはなんとかなります。」

 これは一級コトバ使いのヨウヒのセリフなんですが……。

 コトバには敬意を持ち、大事に使わないと大変なことになるよ……と自分が書いたお話を通して、コトバに教えられている感じです。

 現在第二巻を進行中。(やっぱりなかなか完成しません。)コトバの持つ力にご興味がある方に楽しく読んでいただけたら、幸いです。

(れいじょう・ひろこ)●既刊に『長浜高校水族館部!』『病院図書館の青と空』「妖怪コンビニ」シリーズなど。

『なんとかなる本
講談社
『なんとかなる本 樹本図書館のコトバ使い①』
令丈ヒロ子・著/浮雲宇一・絵
定価1,485円(税込)