コーラには不思議な力がある
僕がコーラ職人という、おそらくこの世の中のほとんどの人が聞いたことがない道を選んでから、不思議なことが次から次へと起きています。それは偶然の出会いだったり、奇跡的なタイミングで起きる出来事だったり。
知り合いの嶋野さんはこの本を読んで、「不覚にも泣いてしまいました」と言っていました。泣かせるつもりなど1ミリもなかったのですが、もしかしたらこの本には不思議なエネルギーが詰まっているのかもしれません。
そもそも、コーラという名前。なぜコーラというのか知っている人は少ないと思います。コーラの語源は西アフリカ原産のアオギリ科の植物「コーラ」です。どういうことか。それにはコーラの歴史を辿る必要があります。
コーラは1886年にアメリカの薬剤師「ジョン・ペンバートン」が開発した薬のような飲み物。薬効成分としてコーラの実のエキスと、コカインの原料として有名なコカノキの葉のエキスを入れていました。その有効成分を前面に押し出すためにコーラ、という名をつけました。そう、もともとは原料の名前だったのです。
そして、コーラの実は現地の西アフリカでは結婚式の引き出物に使われたり、幸せなタイミングで歓迎する時に使われたりするようなとてもハッピーなもので、神様からの贈り物ともいわれるものでもあったのです。
僕はコーラが世界中に広まったのも、そんなコーラがもともと持っていた不思議な力、そして語感にあると思っています。そして、僕のお祖父さんが漢方職人だったことと、コーラを作ったジョン・ペンバートンさんが漢方を学んでいた薬剤師だったことも不思議な出来事の一つです。そんなコーラをテーマにしたこの本にも不思議な力が詰まっているはず。
僕が言っていること、よく分からないですよね? この本を読んだら僕の言っている意味が少しだけ分かるかもしれません。でも全然分からないかもしれません。いったいどちらでしょうか? それでは、本の中でまた会いましょう。
(こーら・こばやし)●本書が初めての著作。
農山漁村文化協会
『イチからつくる コーラ』
コーラ小林・編/中島陽子・絵
定価2,750円(税込)