日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『かるがものクッカ』 かんちくたかこ

(月刊「こどもの本」2023年6月号より)
かんちくたかこさん

知れば知るほど好きになる

 鳥や昆虫など、小さな生きものに出会いにいくのが大好きです。散歩にはいつも双眼鏡を持っていきます。

『かるがものクッカ』のおはなしを書いているときも、カルガモのすがたをさがし、あちこちの川や池に出かけて、カルガモの巣を見つけました。4月の終わりのことです。花をつけたやぶのなかで卵を抱く母カルガモの、あまりの愛らしさに、散歩のたびにそっと観察したものです。

 じつは、主人公の名前をどうしようか悩んでいたころの出会いでした。構成も決まってきていて、フィンランド語で「花」という意味の「クッカ」という名前を選んでいたのですが、このカルガモに出会ったことで、すっきり腑に落ちました。

 カルガモは、大きいくちばしと、目を横切る濃いラインのおかげで、しっかりした顔立ちという印象ですが、よちよち歩くさまや、ひなに気を配る細やかなしぐさに、かわいらしさも感じます。表情もやさしげに見えるのは、ひいき目でしょうか? ひなたちを連れて泳ぐすがたも、求愛のダンスも、とても優雅なのです。たびたび観察してきたカルガモたちのすがたが、クッカに重なって、クッカはおっとりしているけれど、がんばりやさんな性格になったのだと思います。

 このシリーズの一作目『つばめのハティハティ』が刊行されてから十年経ちますが、「ねぐらを見に行きました」、「学校の近くで巣をつくっているツバメを見つけたよ」などといわれることが増え、うれしい気持ちになります。

 知ると興味がわいてきて、その生きもののことをもっと知りたくなります。わたしも、生きものの絵本をつくるたびに、その生きものが大好きになって、もっとよく知りたいと思うようになります。調べたり、観察したりすると、わからないことが出てきて、また調べて。そうして知れば知るほど、命のたいせつさ、自然のたいせつさを感じます。絵本を読んで、そんなことを感じていただけたら、いいな、と思って、生きものの絵本をつくっています。

●既刊に『すずめのまる』『ほうさんちゅう ちいさなふしぎな生きものの かたち』など。

『かるがものクッカ』
アリス館
『かるがものクッカ』
かんちくたかこ・文/箕輪義隆・絵
定価1,650円(税込)