日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ちらかしさんとおかたしさん』 Paul Cox

(月刊「こどもの本」2023年3月号より)
Paul Coxさん

正反対でありながら、補い合い、受け入れ合う二人

 ぼくは、主人公の「ちらかしさん」と「おかたしさん」を、子どものころ大好きだった本の登場人物や、大好きな作家を思い浮かべながら描きました。ヴィルヘルム・ブッシュの『マックスとモーリッツ』、アラン・サントガンの『ジグとピュス』。それからロドルフ・テプフェール、エドワード・リア、レオポルド・ショヴォー……。日本の作家では、長新太、安西水丸、蛭子能収など。それから、この本の輪郭線に青を使ったのは、日本の浮世絵画家の影響です。浮世絵にはヨーロッパからもたらされたプルシアンブルー(ベロ藍)がとても効果的に使われています。

 描画では、ちらかしさんを丸っこく、躍るような雰囲気の線にして、おかたしさんを少しかっちりと、かつ穏やかな線にしました。そして、二人の友情を表すために、温かな雰囲気を意識しながら、最後の場面をのぞき、二人を見開きの左右に分けて描きました。

 ぼくは本を作るとき、よく色数をあえて限定します。今回も6色——赤、黄、紺、青、緑、明るい茶——に絞りました。その代わり、色調に変化をつけるため、ベタ、ストライプ、チェックを織り交ぜてあります。

 人はだれでも多かれ少なかれ、ちらかしさん的要素とおかたしさん的要素を持っていることでしょう。ぼく自身も、とても細かいところがあり、整理整頓が大好きなくせに、アトリエは、ちらかしさんのベッド並みに、ぐちゃぐちゃです。

 伏見操さんの文章で好きなところは、ちらかしさんとおかたしさんという、二人の登場人物が、正反対でありながらも、たがいに補い合って、丸ごと受け入れ合っていること。違いに腹を立てることが全くなく、いつも一緒に楽しそうに毎日を過ごしています。

 この本は、伏見操さんと作った6冊目の作品です。一緒に仕事ができることを、心からうれしく誇らしく思っています。想像力あふれる彼女は、この二人を主人公にしたお話をすでに山ほど考えています。続編をどんどん作ってくれるだろうと楽しみにしています。

フランス語訳・伏見操

(ポール・コックス)●既刊に「日本の神話えほん」シリーズ(全4巻)、『ヘビと船長』(共に伏見操/文)など。

『ちらかしさんとおかたしさん』
教育画劇
『ちらかしさんとおかたしさん』
ふしみみさを・作/ポール・コックス・絵
定価1,540円(税込)