日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ぼくは びっくりマーク』 大友 剛

(月刊「こどもの本」2023年2月号より)
大友 剛さん

ぼくもあなたも びっくりマーク

 今回もまた素敵な絵本の翻訳のチャンスをいただき、とても幸せに思っています。この絵本は記号である〝びっくりマークくん〟の物語です。びっくりマークに悩みがあるなんて考えたことありますか? 作者のエイミー・クラウス・ローゼンタールはユニークな視点で記号達に命を吹き込むことに成功しました。まさにびっくりです!

 面白いのはびっくりマークくんの悩みが、〝彼自身〟であること。つまり何事も強調してしまって、常に目立ってしまう。他人と違っていることでコンプレックスを感じるのは世界共通なんですね。そんなとてもシンプルで普遍的なテーマを、楽しいイラストとストーリーで伝えてくれています。この大胆で洗練されたイラストが『おやすみ、はたらくくるまたち』のイラストを手掛けたトム・リヒテンヘルドだと聞いた時は正直言って私も驚きました。実は、エイミーとトムのタッグの絵本は全米で大ヒットし、実写映画になるほどの人気なんです。ネットフリックスで「YESデー〜ダメって言っちゃダメな日〜」が配信されています。タイトルを聞いただけでもワクワクしますよね。

 話が逸れましたが、今回紹介する『ぼくは びっくりマーク』は、文字と出会ったばかりの子どもはもちろん、大人も主人公のびっくりマークくんに愛情を感じ、励ましたくなるに違いありません。彼はハテナ(?)ちゃんに出会うことで〝自分のままでいいんだ〟と気付かされます。自分の素敵な能力に目覚めた彼の姿に、誰しもが心動かされることでしょう。なぜなら誰でも心の中にびっくりマークを持っているから。心の中のびっくりマークって?それは自分らしさ、いわば〝個性〟とも言えるようなもの。

 子どものまだ表面にはっきり現れていないけれど確かに存在する内なる力。そういうことに敬意を払って丁寧に翻訳させていただきました。全ての人の心の中のびっくりマークに届けたい作品。この絵本は私が翻訳してきた絵本の中でも特別な一冊です。沢山の方に愛情を持って読んでいただけたら嬉しいです!!!

(おおとも・たけし)●既訳書に『ねこのピート だいすきなしろいくつ』『さわってごらん! ふしぎなふしぎなまほうの木』など。

『ぼくは びっくりマーク』
ひさかたチャイルド
『ぼくは びっくりマーク』
エイミー・クラウス・ローゼンタール・作/トム・リヒテンヘルド・絵/大友 剛・訳
定価1,650円(税込)