日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『100ぴきかぞく』 古沢たつお

(月刊「こどもの本」2023年2月号より)
古沢たつおさん

100匹家族はいつも一緒

 幼い頃より僕のそばには数匹の猫がおりました。一緒に過ごしていると、おっとりしている子、短気な子、面倒見のいい子や甘えん坊な子もいて、とっても個性豊かだと知りました。そんな猫達に共通しているのは、みんな家族思いでとても優しい所です。もともとの兄弟、親子はもちろんですが後から我が家にやってきて家族に加わった子にも、みんな一丸となって面倒を見てくれるのです。また、僕が風邪をひいて寝ている時など、じっと枕元に座って見守っていてくれたものでした。

 そんな優しくて愛情あふれる猫達のお話を描きたいなと構想を巡らせていったのです。まず、猫の家族のお話にしようと決めました。どんな家族構成がいいかなと考えていた時に、江戸から明治時代に作られた「おもちゃ絵」を思い出しました。特に歌川国芳の弟子達が手がけた、猫達がビッシリ描き込まれている絵をじっと眺めているのが好きだったのです。きっと画面いっぱいに沢山の猫達がいたら楽しいだろうなぁと、100匹の大家族の姿が思い浮かびました。この大家族はどんな家に住んでいるのか、お出かけする時はどんな感じだろう、電車に乗れば満員になるだろうなとか、乗り換えも大変だろうと想像が膨らんでいったのです。

 それから今度は子供達みんなに名前を付ける事にしました。好きな物や得意な事を持たせたり、泣いている子や怒っている子など性格もさまざま考えました。例えば、読書好きな2匹の子は1巻から6巻までの本を読み進めていたり、拾い物好きな子はその日に拾った物を寝る前にベッドの上で披露していたり、1匹1匹の物語を追う事が出来るようにしました。

 そして、どのページを見ても必ず100匹の家族がみんな一緒にいる事にしようと決めたのです。

 おかげでだいぶ自分を追い込んでしまいましたが、ルーペ片手に頑張って描きました。お気に入りの子を見付けて、繰り返し読んでいただけたら嬉しいです。

(ふるさわ・たつお)●既刊に『クヌギくんのぼうし』『おしゃれなからす ガラフィーさん』など。

『100ぴきかぞく』
大日本図書
『100ぴきかぞく』
古沢たつお・作
定価1,540円(税込)