日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

我が社の売れ筋 ヒットのひみつ36
『ゆきのけっしょう』 岩崎書店

(月刊「こどもの本」2022年11月号より)
『かみなり』『ながれぼし』『ゆきのけっしょう』

空のふしぎに触れる第一歩

武田康男 監修・写真/小杉みのり 構成・文
2019年12月刊行

「雪の結晶には、筒型や針のような形もあるんだよね」そんな話を子どもとしていたことがあり、小さい子向けに、雪の結晶の写真絵本ができないか、と思ったことが、この本をつくることになったきっかけでした。

 雪の結晶は、一瞬で形を変えることや、気象条件のこともあり、きれいな形で撮影することは難しいのではと思い、空の探検家としてさまざまな撮影をしている武田康男さんに相談しました。

 すると、ご自身で編み出した雪の結晶の撮影方法があり、その方法だと顕微鏡などがなくても撮影でき、撮りためているものもたくさんあるということを聞き、さっそく写真コレクションを見せていただきました。

 その写真が、宝石のように美しく、自然が生み出す形はすごい! と深く感動したことを覚えています。

 絵本の文章と構成を武田さんの『空の探検記』をまとめた小杉みのりさんにお願いすることになり、一緒に、日光に、雪の結晶の撮影に行きました。季節は春だったのですが、気象予報士でもある武田さんの予報がバッチリ当たり、空から桜の花びらのように大きな雪の結晶がひらひらと降ってきました。夢中で、その様子を観察、撮影しました。

 雪の結晶のはじまり(あかちゃん)は、すべて同じ形の小さな小さな六角柱。成長し、形を変えながら、空から降ってくる。はじまりは同じ形でも、降ってくる結晶の形はひとつとして同じものはありません。ふしぎですね。その変化の様子や実際の結晶の大きさなども説明し、美しい雪の結晶をとじこめた写真絵本になりました。

 小さい子向けの雪の結晶の絵本はほとんど類書がないこともあり、絵本が発売されてからさまざまなところで紹介されるようになり、冬の定番の絵本のひとつとして、読んでもらえるようになりました。

 そこで、子ども向けの天気シリーズ絵本として続けようということになり、次に『ながれぼし』を刊行。ながれぼしはどこからきて、なにになるのか? めずらしい写真とともに説明する絵本です。巻末に流れ星や流星群の解説も入っています。今年は『かみなり』の写真絵本を刊行。かみなりってなに? どこでどうしてうまれるの? を迫力ある写真とともに説明しています。

 どれも、一瞬のできごとであり、ふしぎで神秘的な自然現象です。子どもたちにとって、空のふしぎに触れる第一歩になるような、絵本になるといいなと思っています。

(岩崎書店 佐々木幹子)