こどもの本

私の新刊
『トンちゃんってそういうネコ』 MAYA MAXX

(月刊「こどもの本」2022年10月号より)
MAYA MAXXさん

トンちゃんは こういうネコなんです

 私がこの本を描いてから23年が経ちました。いつの間に?とびっくりします。23年経って世界はいろいろ変わりましたがトンちゃんは全然変わらないし、私が込めた想いも全然色あせていないように思います。

 トンちゃんは足がひとつありません。でも全然気にしていないし、そんなことより今生きていることを、世界の中で生きていることを精一杯楽しんでいます。ないことを不満に思うより、ないもの以外が全部あることに満足しています。だってないものはないし、ないことを悩んだり悲しんだりする余りあるものがある幸運をないがしろにして……結局何もかもなくしたりしていませんか?と問いかけています。

 私がこの本を描いた23年前より今の方がよりこのトンちゃんの問いかけが大きく深く意味を持ってきたような気がします。

 私たちはたくさんのものを持っています。同じようにたくさんのものを持っていません。それはみんな同じ。全部持っている人もいないし、全部持っていない人もいません。あの人はたくさんのものを持っているよ〜という人も他人にはわからないコンプレックスがあったり心に傷があったり、ないものばかり気になったりもっともっと欲しくなったりして心に平安が持てないかもしれません。

 私は何にも持っていないよと言う人も少なくとも命を持っていますよね。命は自分で作ったものではないですからね。一番最初のいただきもので、一番大きな持ち物で、生きている全員が持っている一番大切な持ち物ですよね。

 トンちゃんも足はひとつないけれど足以外のものは全部持っていて、なんといっても命を持っています。生きているっていろいろあって、うまくいかないことや苦しいことや悲しいことがたくさんあるけれど、うれしいことや楽しいこともたくさんある。自分が自分に満足して世界を見てみれば、世界はいつもそこにあって美しい。トンちゃんはそういうネコです。

(まや まっくす)●既刊に『ちゅっ ちゅっ』『らっこちゃん』『移住は冒険だった』など。

『トンちゃんってそういうネコ』
汐文社
『トンちゃんってそういうネコ』
MAYA MAXX・さく
定価2,200円(税込)