日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ひめさま! じいがかぜをひいたでござる』 丸山誠司

(月刊「こどもの本」2022年10月号より)
丸山誠司さん

方言はおもしろい

「方言はでーらーいっぱいあって、めちゃんこおもしろいがや。」これは、私が小中高校生の頃ペラペラだった名古屋弁。「方言はめちゃめちゃようさんあって、むっちゃおもろいで。」これは、大学生の頃大阪で暮らしながらマスターした(と自分では思っている)大阪弁。そういえば、大阪弁だと「自分」が二人称だったりするんですよね。「自分どうするん?」=「君はどうするの?」。

 まあそれはさておき、いわゆる標準語だと「方言はすごくたくさんあって、とてもおもしろい。」となるでしょうか。なんだか味気ない……。

 前作『ひめさま! ぞうはすごくおおきいでござる』、今作『ひめさま! じいがかぜをひいたでござる』は、方言を楽しむ絵本です。

 お話の中では、じいとひめさまの元に日本全国からいろいろな忍者がやってきます。今作なら北海道からイクラにんじゃ、岩手からカッパにんじゃ、静岡からウナギにんじゃ等々。前作なら沖縄からゴーヤにんじゃ、大阪からたこやきにんじゃ、福井からきょうりゅうにんじゃ等々。そんなビジュアルも特徴的な忍者たちが各々口にする方言がお話のキモ。

 けっこう前から気になっていたことがあって、チョンマゲ時代、テレビやラジオも無くてたぶん標準語なんて無かった昔、出身地の違うお侍さんなり、忍者なり、商人なりは方言どうしで会話がちゃんとできてたのかなぁ?と。違う土地の者どうしがたまたま出会ったときに、どんな風に会話してたのかなぁと。いろいろと通じなくておもしろいことになってただろうなぁと。そんな妄想がお話のアイデアの元になっています。

 たまにあると思いますが、電話にでた途端急に方言になったり、その逆で、急にビジネスライクな標準語になったり。あれっておもしろくていいなぁと思うんです。絵本に出てくる方言は限られたものですが、言葉の違い(今で言うところの多様性?)をおもしろがってもらえたら嬉しいがね。

(まるやま・さとし)●既刊に『おならおうこく』『そうだソーダ』『ダイズマンとコメリーヌ』(中川ひろたか/文)など。

『ひめさま! じいがかぜをひいたでござる』
光村教育図書
『ひめさま! じいがかぜをひいたでござる』
丸山誠司・作
定価1,430円(税込)