
夏山の感動を子供の頃の目線で絵本に!
岡山の小さな町で育った私は、田舎にないものが何でもある都会に憧れを持っており、大阪で就職しました。都会での暮らしは想像どおり、物や情報が
十年ほど経ち、街にも慣れた頃、ふと、子供の頃遊び回っていた山を訪れてみました。夏の山は、緑が青々と生い茂り、生命力に満ち溢れた場所でした。「大人になり昔の場所を訪れると、その世界は小さく感じられるもの」という刷り込まれた常識は簡単に裏切られました。陽射しを浴びようと力一杯両腕を伸ばした木々たちや、虫や鳥たちの大合唱、夏空に膨れ上がる入道雲など、とにかく全身に覆い被さってくる夏山の爆発的なエネルギーに圧倒されました。そして初めて、ここには都会にないものが何でもあるということに気が付きました。いえ、ようやく思い出せたのかもしれません。そして、この感動を子供の頃の目線で絵本にしたいと思い立ったのです。
描き上げた絵本は、ピンポイント絵本コンペで優秀賞を受賞。その数年後、昆虫の研究をされて博士号もお持ちの編集者さんと偶然出会い、もう一度いちから作り込み、さらに磨き上げた『ぼくらのひみつきち』が完成しました。
都会から田舎に来た少年が、地元の子供達と夏山を冒険する物語。私が子供の頃に胸をワクワクさせて楽しんだ夏の魅力を、力いっぱい描き切ることができました。夏の中で感じた音、におい、味、感触。そこで体験した情景がたくさん詰まっています。
この作品を世に出すことができたのは、奇跡の偶然と出会いがあってこそです。最初の夏山での感動から八年、なぜあの時山に入ろうと思ったのか…。そういえば山の入り口で
※ミヤマカラスアゲハも絵本の中に出てきますよ!
●既刊に絵本『オバケのしわざ!?』、詩画集『星 かぜ ぼくら』。
出版ワークス
『ぼくらのひみつきち』
といよしひこ・作・絵
定価1,760円(税込)