
毒親と親ガチャ
本書には二人の母が登場します。
一人は「あなたのため」と言いながら、娘には何も考えさせようとせず、生活をコントロールし、将来を決めてしまっている親。
もう一人は「私とあなたは別の生き物」と言って、娘に自由を認めて好き放題にさせているように見えながら、実際は、自分の思想信条を押しつけている親。
一見、真逆に見えますが、どちらも子どもにとっては、迷惑な親、いわゆる毒親ではないでしょうか。
私の親は前者でした。その反発から、私自身は後者のように、子どもは束縛しないで育ててきたつもりでしたが、育てあげてからふりかえってみると、やはり子どもにとっては、迷惑な親であったことに気づきました。
人には、どちらの側面もあって、どちらに傾くこともあるのでしょう。
最近、親にも当たりはずれがある、子どもは親を選べない、という意味で「親ガチャ」という言葉が使われています。一般に、お金のない親や毒親は、はずれとされています。
でも、人は完璧ではありません。そこそこお金があっていっしょうけんめい子どものことを考えて行動していたとしても、子どもにとって、はずれという場合だってありえます。
親ガチャではずれを引いてしまったら、それでもう子どもは、絶望、終わりなのでしょうか。
私は違うと思うのです。
考え方を変えれば、世界が変わるはず。時代のほうだって、常に変化していて、大人たちの今までの経験からは想像もつかない展開をする可能性がある。そして、子どもというものは内部に大きな力を秘めていて、その時代の変化にちゃんと向きあっていくことができるものだと思います。
その希望を私は、タイトルの『飛べ!遺伝子を超えて』という言葉に込めました。
子どもさんのみならず、子育て中の親御さんにも読んでいただきたいと思います。
(もりかわ・しげみ)●既刊に『マレスケの虹』『はなの街オペラ』「アサギをよぶ声」シリーズなど。
国土社
『飛べ! 遺伝子を超えて』
森川成美・作/森川 泉・絵
定価1,540円(税込)