日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

我が社の売れ筋 ヒットのひみつ32
『地球のことをおしえてあげる』 鈴木出版

(月刊「こどもの本」2022年6月号より)
『地球のことをおしえてあげる』

SNSとパネル展とサイン本の相乗効果

ソフィー・ブラッコール 作/横山和江 訳
2021年2月刊行

 それは2019年9月30日のできごとでした。エージェントから一冊の絵本のpdfが届きました。「If You Come To Earth」……もしも地球に来るのなら……ファンタジーかしら? えっ、80ページ? ずいぶんぶ厚いのね。わっ、ソフィー・ブラッコールの新作 なんだ!

 美しくちょっぴり個性的な絵が好きで、長年憧れてきたブラッコールの新作を目にして、「版権オープンなのですか!?」と即座に電話して尋ねたことを鮮明に記憶しています。

「地球のありとあらゆることを、まだ見ぬ宇宙の誰かさんに伝える」というコンセプトも素晴らしく、なんとしても弊社から刊行したかったので、初版の印刷部数を張り込み、どうにか版権を落札することができました。おとなしく売れていくのを待っているだけでは、とてもさばき切れないような部数です。

 そこで、刊行前に八分の一サイズの手製ミニ絵本を制作。できる限りの事前告知につとめ、事前注文数を伸ばしました。そうこうするうちに大量の初版が到着。倉庫にどーんと積み上げられました。

 さて、店頭に『地球のことをおしえてあげる』が並び始めると、すぐにSNSに感想をあげてくださる方が続出しました。コンセプトのユニークさや絵の美しさ、ボリュームの割に買いやすい価格設定などを絶賛してくださったのです。口コミは瞬く間に広がり、初版の山は見る見る小さくなっていったので、ほっと胸をなでおろしたのでした。

 ある日、横須賀市の絵本専門店「うみべのえほんや ツバメ号」から電話がかかってきました。「『地球のことをおしえてあげる』をお店で激推ししている。パネル展の計画はないか?」というお問い合わせでした。

 原画展ではなくパネル展。そういう発想を持ち合わせていなかった私が、「パネルでもお客さんは見に来てくれるものなのでしょうか?」とお尋ねしたところ、「もちろん来ますよ!」と店主さんは即座に断言してくださいました。

 そうして始まったパネル展は、ツバメ号を皮切りに、大田区、柏市、大阪市、つくば市へ。それにともない、翻訳の横山和江さんのサイン本もどんどん売れていきます。素敵なサインは、見返しにしっくりなじみ、付加価値となって販売の後押しをしてくれました。毎週のように大量のサインをしてくださった横山さんには深く感謝しています。

 この原稿を書いている2022年3月現在、初版は完売、2刷も順調に出荷しています。

 弊社の財産として、末長く大切に売っていくことを目指します。この絵本の温かいメッセージが、多くの読者に届くことを願っています。

(鈴木出版 高瀬めぐみ)