日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『空を見上げてわかること 身近だけど知らない気象予報士』 斉田季実治

(月刊「こどもの本」2022年6月号より)
斉田季実治さん

空の先に見ているもの

「空を見上げる」のは、どんなときでしょうか?

 青空が広がっているとき、雨が降り出したとき、涙があふれそうなときに天を仰いだ経験もあるかもしれません。

 空には不思議な力があります。ヒット曲の歌詞を見ても「青空」や「虹」などの気象用語が一つも出てこない曲の方が珍しいくらいです。それだけ空や天気に関心がある人が多く、心まで左右される存在なのだと思います。

 私はそんな空を見上げることを仕事にしている今を、とても幸せに感じています。

 私は子供のころ、木に登ってよく空や街並みを眺めていました。親の仕事の都合で引越しが多く、全国各地に住んでいたため、その光景を目に焼き付けようとしていたのかもしれません。九州のように台風や大雨が多い地域もあれば、東北のように大雪に苦労する地域もあります。天気や気候に興味を持つのは必然だったように思います。

 北海道大学水産学部へ進学、乗船実習で天気の重要性を感じて、気象予報士の資格を取りました。最初に就職したテレビ局では、報道記者として自然災害の現場を数多く取材しています。

 そして今、気象キャスターとして、天気をたくさんの方に伝えて、災害から命を守る行動を促すのが私の仕事になっています。これまでの経験のすべてが、今の仕事につながっていると感じています。

 天気を予報することは、未来に目を向けることでもあります。今がどんなに大変な状況にあったとしても、今の先にはかならず未来があります。その未来を具体的にイメージし、行動に繋げることができれば、未来はおのずと開けていくのではないでしょうか。

 私は今、気象予報士の未来を考えて、新たな活動を始めています。子供のころに見上げていた空のもっと向こうに思いをせて「宇宙天気」の普及に関わっています。

 この本が「空を見上げる」きっかけとなり、未来に備えることに繋がれば幸いです。

(さいた・きみはる)●既刊に『新・いのちを守る気象情報』『知識ゼロからの異常気象入門』など。

『空を見上げてわかること 身近だけど知らない気象予報士』
PHP研究所
『空を見上げてわかること 身近だけど知らない気象予報士』
斉田季実治・著
定価1,430円(税込)