日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『おとうさん のぼり』 くすのき しげのり

(月刊「こどもの本」2022年5月号より)
くすのき しげのりさん

「おとうさん のぼり」バンザイ!

 私の作品では、お母さんと子どもの関係を書いたものが比較的多いのですが、今回の作品では、おじいちゃんを含め、お父さんと子どもとの関係を書こうと思いました。

「おとうさん のぼり」「おかあさん のぼり」は、子どもがお父さんやお母さんに登っていく、ただそれだけの単純な遊びです。

 娘が小さかった頃、共働きであった我が家では、夜一緒にする遊びの一つに、この「おとうさん のぼり」がありました。(我が家では、お父さんである自分に登ってくることが多かったので、「おとうさん のぼり」と呼んでいたのです。)

「おとうさん のぼり」。それは、なんの道具も、もちろん電源も必要ありません。お父さんやお母さんがとるいろいろなポーズを、ゴリラ、ロボット、モンスターと、いろいろなものに見立てて、子どもが登っていくのです。

 今思えば、「おとうさんのぼりやろう!」といっては夢中で登ってきた娘との時間、楽しげな様子や笑い声は、かけがえのない思い出です。

 仕事をがんばって、疲れて家に帰ってきたお父さんやお母さんにとって、子どもにせがまれる「おとうさん のぼり」や、「絵本の読み聞かせ」などは、いささか負担に感じられることがあるかもしれません。

 しかし、「おとうさんのぼりやろう!」「絵本読んで!」と、子どもからせがまれるのは、子どもが小さな頃のほんとうに僅かな期間なのです。

 その時には、「子どものために……」と思うかもしれませんが、振り返ってみると、それは自分の人生にとってもキラキラとした愛おしい時間であったと思えるにちがいありません。

 現在はどのご家庭でも、新型コロナ禍で、外出や旅行を控えられていることでしょう。

 家庭で子どもと一緒にできる遊びとして、「おとうさん のぼり」「おかあさん のぼり」はいかがでしょうか。

 もちろん服装も場所も安全第一で、無理をせずに行なってくださいね。

●既刊に『ええところ』『へなちょこ』『ひとりでぼっち』(共にふるしょうようこ/絵)など。

『おとうさん のぼり』
学研プラス
『おとうさん のぼり』
くすのきしげのり・作/北村裕花・絵
定価1,540円(税込)