
みんな監督!
すぐれた映画やドラマのシナリオは、読みものとしても楽しめます。
では、絵本のテキストをシナリオのようにしたら?
そう考えてはじめたのが会話形式の絵本で、何冊か既刊をへて、この「生活科えほん」シリーズは、きっかけとなったシナリオのもつ魅力に、もっとも近づけたと思っています。
シナリオでは、セリフのあたまに役名がつきます。この絵本では、セリフのあたまに登場人物の顔アイコンがついています。
映画やドラマのナレーションは、絵本では状況説明のテキストにかわり、シークエンスの設定を伝えるシナリオのト書きは、絵本の絵になりました。
「じゃあ、監督は?」
監督は……作家である私たちではありません。
この絵本を演出するのは、読み手のみなさん。監督は、子どもたちのまえで絵本を読むみなさん自身です。
「生活科」は、小学1、2年生の教科です。幼稚園・保育園から、小学校にあがった子どもたちは、それまで以上に、集団のなかで自己主張しなければならないかもしれません。
でも、自己主張するまえに、「あいてのことばを聞いてほしい」と、個人的に強く思います。
絵本の読み聞かせをとおして、子どもたちの聞く力を育てられたら、読み手という監督のみなさんの手助けができたら、作家として、とてもうれしいです。
読み手をとおして、目と耳でかんじた本に興味をもった子どもは、自ら本を手にして、読みはじめるはずです。
「読み聞かせ」から「ひとり読み」に移行しても、映画やドラマのシナリオが読みものとして楽しめるように、この絵本もきっと楽しんで読んでもらえると信じています。
そのとき、子どもたちは、おとなにはない想像力で物語を演出し、監督になりきっているはずです。
そんな光景を思いうかべて、私たちは、きょうも絵本をつくっています。
(ひらた・まさひろ、ひらた・けい)●既刊の会話絵本に『おかん』『ねえ、ほんとにたすけてくれる?』『かいてんずしだいさくせん』など。
大日本図書
「大日本図書の生活科えほん」食育編(全3巻)
平田昌広・ぶん
平田 景・え
本体各1,500円