
クリスマスになぜツリーを飾るの?
十二月が近づくと、あちこちに華やかなクリスマスツリーが飾られ、街は一段と賑わい始めます。クリスマスにツリーを飾る習慣は、いつごろ始まったの? 最初に思いついたのは誰なの? 子どもたちの素朴な疑問に両親が答える形で、ツリーにまつわる様々な知識を教えてくれる絵本です。赤と緑の表紙がひときわ目立つこの絵本をニューヨークの書店で見つけ、日本の子どもたちにもぜひ読んでほしいと思いました。
作者トミー・デ・パオラはアメリカの人気絵本作家。自身の子ども時代や家族のエピソードを描いた絵本、祖父から聞いたアイルランドの昔話など、私も今までに七冊翻訳させていただきましたが、ユーモアあふれる温かい作風にいつも心なごみます。
二○一一年にニューオーリンズで開催された全米図書館大会に行った時、出版社のブースでサイン会をしていたトミーに初めて会いました。日本でも愛読者がたくさんいるのでぜひ来日して下さい、と言うと、「知ってる知ってる! それなのに一度も日本に行ったことがないなんて信じられんだろう? でも飛行機の長旅はもう無理かな、ハッハッハ!」と、満面の笑顔。まん丸な顔にでっぷりしたお腹、周囲をハッピーにするその人となりに、私はふとサンタクロースってこんな人かも、と思ってしまいました。
この大会の最終日に全米の主要な三つの児童図書賞の授賞式が行われ、児童文学遺産賞を受賞したトミーが最後に壇上に上がると、やんやの大喝采で最高に盛り上がりました。アメリカの人たちにどんなに愛されているかがよくわかり、私も嬉しくなりました。
ところが残念なことに今年三月に突然訃報がはいったのです。八十五年の生涯に、残した作品は二百七十冊。その中に彼の笑顔がこれからも生き続けていくことを願わずにはいられません。
さて、彼の絵本は『ネコとなかよくなろうよ』も続けて出版されます。今大人気のネコについて、種類や特徴、歴史までわかる楽しい知識絵本です。
(ふくもと・ゆみこ)●既訳書に『ジャックのどきどきモンスター』、既刊に『図書館のふしぎな時間』など。
光村教育図書
『クリスマスツリーをかざろうよ』
トミー・デ・パオラ・作/福本友美子・訳
本体1,300円