
YA+衝動
担当編集さんと、さあ、なにを書きましょうか、となったとき、ダメ元で、「音楽というか、パンクが題材のお話ってどうでしょう?」と切り出してみました。ここで、「パンク……?」という反応が返ってきていたら、『拝啓パンクスノットデッドさま』をこの場でご紹介することはできていませんでした。「いいですね、パンク! 実は、ぼくも音楽ものはどうですかってお話しするつもりでいたんです」といっていただけたこと、そして、担当編集さん自身もまさかのパンク好きだったことから、児童書らしからぬ、【YAパンク小説】を書かせていただけました。 ちなみにパンクというのは、70年代半ばに生まれたロックのスタイルのひとつで、逆立てた髪に、スタッズのついた革小物、ボロボロのTシャツを身につけて、ノーフューチャー! と叫ぶ若者たち、というあたりが一般的なイメージかと思います。好き嫌いがわかれるジャンルです。
しみじみ、児童書の題材として受け入れてくださった担当編集さんをはじめ、くもん出版の方たちは度量が大きい! としかいいようがないのですが、思春期にパンクを通ってきた大人のひとりとしては、これほどYAとの相性がいい音楽、カルチャーはないんじゃないのかな、と思っています。たとえ、いまの時代のものではなくなってしまっていても、その精神性は永遠に十代のものだし、多くのYAで描かれてきたものに通じていると感じるからです。同時に、わたし自身が書く物語にも、宿っていてほしいと願ってやまないものでもあります。
装幀も、一目でパンクを感じてもらえるものになりました。書名を忘れて書店にいっても、パンクっぽい表紙の、といえば、伝わるかもしれません。
題材は変わり種でも、描かれているのは、高校一年生と中学二年生の兄弟が過ごす日々の中の、普遍で不変なものばかりです。どうぞお気軽に、お手に取っていただければ! です。
(いしかわ・ひろちか)●既刊に『青春ノ帝国』『わたしが少女型ロボットだったころ』「少年N」シリーズなど。
くもん出版
『拝啓パンクスノットデッドさま』
石川宏千花・著/西川真以子・画
本体1,400円