日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『生ごみからエネルギーをつくろう!』 多田千佳

(月刊「こどもの本」2020年9月号より)
多田千佳さん

友だちといっしょに!

 コロナ禍の日々に、私を興奮させたのは、映画音楽の巨匠ジョン・ウィリアムズの指揮するオーケストラ演奏だった。小学生の頃、初めて見た映画は、スピルバーグ監督の宇宙人と子どもが出会う『E.T.』で、その音楽がジョン・ウィリアムズだった。曲を聴くと、子どもに戻った気がした。あの頃に、宇宙や未知への憧れが形成されたのかもしれない。

 大学生になり、微生物を顕微鏡で見た。その異様な姿や動きは未知そのもので、ワクワクした。エネルギーをつくるものもいると知り、メタン菌で有機物からエネルギーガスをつくる研究をした。

 大学教員になり、東日本大震災を経験し、今の若者が火でご飯を炊くことを知らないと知った。子どもらに火を伝えたい、生ごみからエネルギーをつくり、火を点けて使う講座をやろう! 2012年の夏休み、故郷で、牛の糞からメタンガスをつくって燃やす講座をした。ガスに火を点け、水をお湯にした。子どもらの真剣な様子に「もう1回、火を点けてみたい人!」と聞いたら、全員が「やりたい!!」と手をあげた。それが忘れられず、毎年、各地で出前授業をさせてもらった。その活動は、オリンピック・パラリンピックの聖火をみんなでつくったメタンガスで燃やそう! につながった。聖火への夢が後押しし、いろんな子どもと出会えた。

 あるとき、授業に出られない人にも伝えたいと思った。わかりやすく絵本にしたいと思い、高校の同級生でアニメーション映画監督の米林宏昌さんに連絡してみた。アカデミー賞にノミネートされた米林さんの絵力はすごかった! おかげで、この本ができるまで、すごく楽しい時間だった。その楽しさも絵本には溢れている! 

 本の表紙をめくった見返しは「宇宙」にしてもらった。米林さんが、私の思いを遥かに超えて「微生物の宇宙」にしてくれた。そう、私は、ここに浮遊するメグルちゃんのように、あの頃から変わっていない。この本が、子どもたちの夢の世界への扉になればと願う。

(ただ・ちか)●東北大学大学院農学研究科准教授。専門は環境微生物学、有機性廃棄物処理。本書が初の著作。

『生ごみからエネルギーをつくろう!』"
農山漁村文化協会
『生ごみからエネルギーをつくろう!』
多田千佳・ぶん 米林宏昌・え
本体1400円