
ほんとうの「豊かさ」とは
ひとりぽっちのリンちゃん。
ある朝、窓のそばでみつけた一つぶのタネを、土にそっと埋めて、お水をやると、それは、みるみるのびて、天にもとどくほどの、大きな木になりました。
しかも、そのあと、見たことのないふしぎな花がつぎつぎと咲いたので、びっくり。村の人々も集まって大さわぎ。
そこに目をつけた、ひとりの、欲ばりおじさん。「この、世にも珍しい木をもとに、ひともうけしよう」と欲ばりあたまにピカッとひらめいたのです。もともと、大金持ちなのに、もっと、もっと、ふやしたくなったのです。そこで、持ち主のリンちゃんに、お金もうけ話の取り引きをもちかけるのでした。
リンちゃんは、自分がまいたタネがもとでとんでもないことになり、悲しい気持ちになりました。そして勇気を出して、この話をことわりました。
この、お金もうけしか頭にないおじさんに対して、その時ふしぎな大きな木は、どんな態度をとったのでしょうか?
そうです この時大きな木がくりひろげる、自然界のパフォーマンス。「おじさん」対「大きな木」の対決です。
これには読者のこどもたち諸君も目をみはることでしょう。自然界の大きな力の前で、お金に目のくらんだ人間とは、なんと小さな、こっけいな存在なのでしょう
絵を描きながらふと、この欲ばりおじさんが「たすけてー」と、風にとばされたあとのことを考えました。もし、これをきっかけに心を入れかえて、よくばり心をすてて、いいおじさんになってくれたら
一生懸命、畑仕事にせいを出して、汗をふきふき「いやあ、昔はバカだったなあ」などと、ひとりごとを言って、リンちゃんにクスクス笑われたりして。仲良しになってくれたらうれしいと思いました。
(たむら・せつこ)●既刊に『HAPPYおばさんのしあわせな暮らし方』など、挿絵に「おちゃめなふたご」シリーズなど。
星の環会
『星のなる木』
くすのきしげのり・作/田村セツコ・絵
本体1,400円