
本気の恋がしたい女の子たちへ
漫画家としてデビューした私が、初めて書いた小説は、児童書だった。
ポプラ社から刊行された『ときめき時代 つまさきだちの季節』という作品が、私の小説デビュー作だ。
その後、講談社で少女小説を書かせていただくことになった。児童書に関しては、デビューからずっとポプラ社にお世話になっていたが、『コロボックル物語』の大ファンだった私にとって、「青い鳥文庫」は憧れだった。いつかあの青い枠の表紙の本で書かせていただきたいと思っていた。
『きみと100年分の恋をしよう』は、念願の青い鳥文庫、第一作だ。
近年は大人の女性向けの小説を書いていたので、十代の女の子向けの小説を書くのは、二〇〇六年に講談社X文庫ティーンズハートシリーズがなくなって以来、十四年ぶりとなる。
十四年もたてば、女の子たちの世界も変わっただろう。何より変わったのは、スマホの存在だ。最近では、中学生の多くがスマホを持っている。友人とのコミュニケーションツールとしてLINEが使われているし、LINEがイジメの手段となることもある。
確かに、女の子たちの流行や生活は変わったかもしれない。
それでも、女の子の恋する気持ちや夢見る気持ちは、いつの時代も変わらないと信じている。
主人公の天音は、小児脳腫瘍という病気を抱えている。今は元気に生活していても、いつ再発するかわからない。だからこそ、・今・をせいいっぱい生きたい。大人にも負けないくらい、本気の恋がしたいと願っている。
この小説は、子供たちに読んでほしいのはもちろんだが、大人の女性が読んでも、少女時代のときめきや、ひたむきな気持ちを思い出して、楽しんでいただけるのではないかと思う。
今の小・中学生のママたちは、ちょうど「少女小説世代」だ。かつて、私の本を読んでくれていた読者さんたちが、ママとなって、子供と一緒にこの本を読んでくれたなら、これほど嬉しいことはない。
(おりはら・みと)●既刊に『幸福のパズル』『時の輝き』『制服のころ、君に恋した。』など。
講談社
『きみと100年分の恋をしよう はじめて恋が生まれた日』
折原みと・作/フカヒレ・絵
本体700円