
看取りをとおして「いのち」と向き合う
國森康弘 写真・文
2012年1月~刊行
写真絵本『いのちつぐ「みとりびと」』シリーズは、「ヒット」という言葉はそぐわないかもしれませんが、2012年の発行以来、幅広い読者に支えられて第3集全12巻にまで成長しています。企画・編集に着手した頃には、看取りや死を直視した絵本は、ほとんどなかったように思いますが、編集部ではこの企画を、これまで一貫して向き合ってきた「農─いのちをそだてる」や「食─いのちをいただく」といったテーマとの連続性のなかでとらえることができたようにも思います。
第1巻『恋ちゃんはじめての看取り』は、小学5年生の恋ちゃんが、大好きだった92歳のおおばあちゃん(曽祖母)を自宅で看取り、死と向き合った体験を、ありのままの臨場感あふれる写真と短い文─恋ちゃんのまっすぐな言葉─で描いたものです。
とはいえ、このシリーズは発行当初には、絵本・児童書としては、「ありのまますぎる」ためか、敬遠されたこともありましたが、思いがけず「けんぶち絵本の里大賞(2012年度)」大賞に選ばれたり、医療・看護・福祉関係で高く評価されたりしたことも契機となり、こどもから大人まで、小学校から大学まで、と幅広い読者が生まれてきました。
2017年には、『恋ちゃんはじめての看取り』が「世界のバリアフリー児童図書」にも選ばれ、そこでは次のように紹介されています。「この写真絵本は、小さな子ども向けの作品にはめずらしいほど、包みかくさず、生から死への移行を間近に敬意をこめて見せています。難しいテーマを淡々と伝える姿勢と、作品のかもし出す穏やかで安らいだ空気は、障害のあるなしにかかわらず、いろいろな子どもたちに受け入れられることでしょう。」(『世界のバリアフリー児童図書─IBBYによる2017年選定図書─』より)
このシリーズでは、看取りや死をタブー視したり冷たい終末としたりするのではなく、それらが日常のなかにある、次代に「いのちつぐ」もの(生命力や愛情を受け渡す「いのちのバトンリレー」)としてとらえ返されています。こうした点も、幅広い読者の共感につながっているのではないかと思います。
第1集(『恋ちゃんはじめての看取り』『月になったナミばあちゃん』等)は農山村の自宅、第2集(『歩未とばあやんのシャボン玉』『華蓮ちゃんさいごの家族旅行』等)は東日本大震災の被災地、第3集(『「もうひとつのお家」ができたよ』『よかった、お友だちになれて』等)は都会のホームホスピス、を舞台として、そこでの看取りの世界が描かれています。