
空と大地と海と
心に残る思い出があります。小学5年生のとき、臨海学校でのことです。
「宇宙って、どこまで続いているんだろうね」
夜、友人と布団の中で語り合いました。
その日、満天の星を見たからかもしれません。見上げていた宿舎の天井が、宇宙のように深い青色となり、そこに無数の星が見えてきました。「ああ、この中の一つが地球なんだ。その上に私がいるんだ」と、胸が震えたのを覚えています。その時の感覚が、なぜかずっと体の中に残っているのです。
地球を感じられる絵本を作りたい、といつしか思うようになりました。
そんな思いから生まれたのが『ぶぶるん ふるふる』です。
本作はナンセンス絵本です。ブタが飛んだりトランクが走ったり、キャラクターたちが空、大地、海を駆け巡ります。そして、どのページもちょっと変わった擬音語から始まります。その擬音語は〈ぶぶるん ぶるぶる〉から〈ぶるぶる ぶぶぶぶ〉〈ぶぶぶぶ ふんらら〉と、鎖のようにつながっていきます。そして最後の擬音語は、最初の〈ぶぶるん〉にもどります。地球を取りまく〈水〉が空と陸と海を循環するように音が廻っていくのです。
ところで、タイトルの〈ぶぶるん ふるふる〉ですが、表紙以外、どこにも出てきません。これは最初に登場するヘリコプターがまだずっと向こうを飛んでいる音です。それを大地に寝ころんだ男の子が感じているのです。
あずみ虫さんの絵は、ダイナミックで立体的。手をのばせばつかめそうです。最後、キャラクターたちがそろって、海の上を進む場面があります。行く手に、燦々と輝く太陽をあずみ虫さんが描いてくださいました。あっと思いました。太陽があってこその地球です。
空、大地、海、それぞれのシーンの最後のキャラクターは、飛びたい、走りたい、泳ぎたいと希望へ向かいます。
読み終わった読者が、空や大地や海を見て、ワクワクした気持ちを感じてくれればいいなと、思っております。
(まつもと・さとみ)●既刊に『声の出ないぼくとマリさんの一週間』『ぼく、ちきゅうかんさつたい』『わたしは だあれ?』など。
ほるぷ出版
『ぶぶるん ふるふる』
まつもとさとみ・ぶん/あずみ虫・え
本体1,400円