日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『イチからつくる ポテトチップス』 岩井菊之

(月刊「こどもの本」2019年10月号より)
岩井菊之さん

お菓子作りは、科学

 私は瓦せんべい屋の長男として生まれ、お菓子製造のお手伝いをままごととして育ちました。こどものころのおやつといえば、せんべいの久助(割れたせんべい)でした。当時の懐かしい思い出が深く脳裏に焼き付いています。

 その後、瓦せんべいだけでなくポテトチップスも製造するようになり、20年程前に私が後を継ぎました。今年の春に完成したポテトチップスの絵本には、お菓子の作り方だけでなく最新のじゃがいもの品種や栽培についても紹介しました。ポテトチップスを通して、農業の世界をのぞくこともできます。

 これまで20数ケ国を旅してきて、いろいろなお菓子に出会いました。それぞれのお菓子の歴史をひもとくと、素材はその地域で生まれた農産物(大地の恵み)でできたシンプルなもので、長い歴史とともに育まれてきたことがわかります。

 ポテトチップスの原料は、じゃがいも、植物油、塩です。油で揚げただけのシンプルなお菓子ですが、じゃがいもがポテトチップスになる過程では、メイラード反応(褐変反応)などいろいろな化学反応がおこります。

 お菓子作りは科学です。私は毎日ポテトチップスを作りながら、「科学の実験ノート」(製造報告書)に記録をつけ、おいしいモノ作りのために実験の日々を送っています。毎日製造していても、未だにわからないことだらけ。専門家に、なぜ、という声を発し続けています。大学で科学の入り口の門をくぐったことは、私にとって、大変な宝物です。

 弊社の工場には、じゃがいも生産者や小中学生、一般の人など、毎日様々な人々が見学に訪れ、じゃがいもがポテトチップスになる様子を目の当たりにします。化学反応の完結の瞬間です。

 この絵本を参考に、親子で、家庭や学校で、じゃがいも栽培やポテトチップス作りに挑戦してみてください。楽しい発見があるかもしれません。お菓子作りを身近に感じていただき、さらには農業・科学を体験、そして探検してもらえたらと思っています。

(いわい・きくじ)●本書が初の著作。

『イチからつくる
農山漁村文化協会
『イチからつくる ポテトチップス』
岩井菊之・編/中谷靖彦・絵
本体2,500円