
クラスメートのお墓
卒業まであと一カ月もない冬の日の朝、担任の先生がいいました。
「昨日の夕方、Sくんが……亡くなりました」
Sくんは病気でしばらく休んでいました。でもクラスのだれもが、耳を疑いました。
教室のSくんの座っていた席には、卒業式の日まで花が飾られました。
ぼくはそれほどSくんと親しいわけではなかったし、泣くのは恥ずかしいので涙を見せたりはしなかったけど、卒業したあと、ときどき思い出すことがありました。
何年かして、久しぶりにクラスの仲間が集まりました。
楽しい時間があっという間にすぎたのですが、帰り道、そういえばだれもあの子の話をしなかった、と気がつくと、しんどくなりました。
数日後、町でばったり会ったクラスメートの女の子と話したとき、ぼくと同じことを考えていたと知りました。
「いまもよく思い出すの。ねえ、お墓がどこにあるのか知ってる?」
「わからない。……もし、わかったら行こうか」ぼくは女の子にいいました。
じつはぼくは小学校の中学年くらいまで、お墓がこわくて、横を通るのもさけて歩くような子どもでした。そのころよりはいくらか少しマシになっていたけど、まだ苦手でした。
でも、あの子のために行かなければ、という気持ちになったのでした。
ぼくらにとっては、すべてが初めてのことで、なかなか簡単にはいきませんでした。クラス全員に声をかけるべきか。親しくなかった自分が中心になってもいいのか。そもそもお墓に行くことにどんな意味があるのか……。
この物語は、実際にあったこうした出来事から生まれました。
十代のころに、友だちの死を経験する人は多くないでしょう。でも死を考えたことがない子はいないはずです。
子どもたちが死について考えるとき、この本が少しでも役に立てば、若くして命を終えたあの子も、きっと喜んでくれるだろうと思います。
(にしだ・としや)●既刊に『両手のなかの海』『ハルと歩いた』など。
徳間書店
『12歳で死んだあの子は』
西田俊也・作
本体1,600円