日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『妖怪いじわるスマートフォン』 土屋富士夫

(月刊「こどもの本」2018年10月号より)
土屋富士夫さん

いじわる妖怪と冒険しよう!

「妖怪いじわる」シリーズの主人公は、おっちょこちょいでお調子者で好奇心いっぱいのひで君です。そんなひで君が毎回いじわるな妖怪に出会って、奇想天外な冒険に巻き込まれます。最初、妖怪が優しそうに見えるので、ひで君は簡単に彼らの言葉を信じてしまいます。ところがその後、妖怪たちは次々といじわるを仕掛けてきます。妖怪のいじわる攻撃に、すっかり困り果てるひで君。その姿を見ていじわる妖怪たちは大満足でした。それでもひで君は、最後には何とか危機を乗り切ります。(毎回、全力を出し切ってがんばりますが、それが成長の糧になっているかは不明。)

 最近の日常生活は安全が最優先で、昔のように子供たちが小さな冒険を体験する機会が減ってしまいました。好奇心旺盛な子供たちにとっては本当にかわいそうなことだと思います。私が小学生のころは学校の帰り道にもミニ冒険のチャンスはたくさんありました。一人で初めての道をドキドキ、ワクワクしながら通ったり、友達と神社の境内を探検しながら遠回りして帰ったり。今なら「危ないから絶対ダメ!」級な冒険も思う存分楽しめました。印象に残っているのは、近所にあった空き地の「地下室探検」です。鉄条網をくぐって忍びこむ空き地に、当時私たちの間では「防空壕の跡なんだ」と、勝手に思い込んでいた地下の部屋がありました。コンクリートの階段を下りて行くと、その先にかび臭い匂いがする真っ暗な部屋がありました。私も友達も「今日こそ入ってみるぞ」と何度か試みましたが、結局誰も部屋の中へは入れませんでした。そこには圧倒的な闇の恐怖がありました。 

 さて、今回のお話ではスマートフォンの妖怪が登場します。妖怪の名前はスマホン。ふと拾ったスマホンが、ひで君にいろいろといたずらを仕掛け困らせます。それでもお調子者のひで君は現実の世界以上にがんばります。

 最後に、このシリーズを読んだみんなが、ひで君と一緒に空想の世界の冒険を思い切り楽しんでくれたら嬉しいです。

(つちや・ふじお)●既刊に「妖怪いじわる」シリーズ、「モンスタータウンへようこそ」シリーズ、『てじな』など。

『妖怪いじわるスマートフォン』"
PHP研究所
『妖怪いじわるスマートフォン』
土屋富士夫・作・絵
本体1、100円