
安眠を、私に!
いつの頃からでしょう? 目がとけるほど眠れなくなりました。昔は、目がさめると次の日のお昼、とかってこともあったのに。なんとだらしない。ねてしまった。時間がもったいない!と後悔ばかりでした。なのに今は、
「あー、ねた!」
という満足感がえられません。
年をとったということなのだろうと思っています。よく、早起きの祖母が、「年寄は、そう眠らなくていいんだよ」といっていました。
きっと、そうなのでしょう。あきらめようとは思います。
でも、おもしろい夢をみながら、ただ惰眠をむさぼりたいのです。
私はこの本にでてくる「あんみんガッパ」です。ふーん、よく眠れるんだ。いいねぇ。おもしろい夢をみるんだ。うらやましいこと。ちょっと意地悪してやろうか。ひひってなもんです。
そんなカッパが営むパジャマ屋さんのあるのが、えびす町ぎんざです。
いろいろな町にアーケードのある商店街があります。たいてい代々つづくお店屋さんが多いのではないでしょうか? 私が住む町にもあります。子どもの頃から通う本屋さん。大人が入るところだと思っていた喫茶店。創業百年とかいうお蕎麦屋さん。よく知っているはずなのに、あれっ、こんなお店あったっけとふりかえってしまったり。私の大好きな商店街です。そんな商店街が舞台です。こんな商店街で、まだまだ不思議なことがおこりそうな気がしています。
魔女がきたり鬼がきたり。そしてモヨちゃんは運よく? いいえ運わるく、あんみんガッパのパジャマ屋さんに出会ってしまいます。
挿絵をお願いした、そがまいさんが描くモヨちゃんが、なんとかわいいこと! カッパのために子守唄をうたってあげるモヨちゃんは、子どもの純真さとけなげさと優しさにあふれています。
私もモヨちゃんに子守唄をうたってもらったら、楽しい夢をみながらぐっすり眠れそうな気がします。
(かしわば・さちこ)●既刊に『涙倉の夢』『竜が呼んだ娘 やみ倉の竜』など。
小学館
『あんみんガッパのパジャマやさん』
柏葉幸子・作
そがまい・絵
本体1、200円