日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『あんみんガッパのパジャマやさん』 柏葉幸子

(月刊「こどもの本」2018年5月号より)
柏葉幸子さん

安眠を、私に!

いつの頃からでしょう? 目がとけるほど眠れなくなりました。昔は、目がさめると次の日のお昼、とかってこともあったのに。なんとだらしない。ねてしまった。時間がもったいない!と後悔ばかりでした。なのに今は、

「あー、ねた!」

という満足感がえられません。

 年をとったということなのだろうと思っています。よく、早起きの祖母が、「年寄は、そう眠らなくていいんだよ」といっていました。

 きっと、そうなのでしょう。あきらめようとは思います。

 でも、おもしろい夢をみながら、ただ惰眠をむさぼりたいのです。

 私はこの本にでてくる「あんみんガッパ」です。ふーん、よく眠れるんだ。いいねぇ。おもしろい夢をみるんだ。うらやましいこと。ちょっと意地悪してやろうか。ひひってなもんです。

 そんなカッパが営むパジャマ屋さんのあるのが、えびす町ぎんざです。

 いろいろな町にアーケードのある商店街があります。たいてい代々つづくお店屋さんが多いのではないでしょうか? 私が住む町にもあります。子どもの頃から通う本屋さん。大人が入るところだと思っていた喫茶店。創業百年とかいうお蕎麦屋さん。よく知っているはずなのに、あれっ、こんなお店あったっけとふりかえってしまったり。私の大好きな商店街です。そんな商店街が舞台です。こんな商店街で、まだまだ不思議なことがおこりそうな気がしています。

 魔女がきたり鬼がきたり。そしてモヨちゃんは運よく? いいえ運わるく、あんみんガッパのパジャマ屋さんに出会ってしまいます。

 挿絵をお願いした、そがまいさんが描くモヨちゃんが、なんとかわいいこと! カッパのために子守唄をうたってあげるモヨちゃんは、子どもの純真さとけなげさと優しさにあふれています。

 私もモヨちゃんに子守唄をうたってもらったら、楽しい夢をみながらぐっすり眠れそうな気がします。

(かしわば・さちこ)●既刊に『涙倉の夢』『竜が呼んだ娘 やみ倉の竜』など。

『あんみんガッパのパジャマやさん』"
小学館
『あんみんガッパのパジャマやさん』
柏葉幸子・作
そがまい・絵
本体1、200円