日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

我が社の売れ筋 ヒットのひみつ2
『なるほどわかったコンピューターとプログラミング』 ひさかたチャイルド

(月刊「こどもの本」2018年3月号より)
『なるほどわかったコンピューターとプログラミング』
時代が必要とする本
『なるほどわかったコンピューターとプログラミング』
ロージー・ディキンズ文 ショー・ニールセン絵
福本友美子訳 阿部和広監修
2017年2月刊行

 昨年の10月末のこと。残業終わりでお腹がすき、中華のお店に入った。レバニラ定食をかき込みながら、ビールを一杯。「んー、最高!」。ふと、テレビを見上げると、プロ野球の日本シリーズが流れていた。ソフトバンクホークス対DeNAベイスターズ。ぼんやりと眺めながら「いい流れかも」とにやり。脳内一人言劇場開演。

 ……子どもの頃、球団の親会社といえば、鉄道関係やデパート、新聞社というイメージだったけれど、最近は新しく参入したIT系企業のチームが強くなってきて、優勝しても違和感なくなってきたなあ。プロの世界だから、今年度がたまたまで、次回は西武や阪神が優勝するかもしれないけど。ただ、なんだか、いまの時代の勢いを表しているようで、ひっかかる。そういえば、パ・リーグでソフトバンクと最後まで優勝を争ったのも、IT系の楽天ゴールデンイーグルスだったっけ。

 新聞を開けばAIに関する記事が毎日のように載ってるし、どんな業種に就いても最低限のパソコンスキルは必須。子どもの習い事の上位にプログラミングが登場し、小学校では2020年からプログラミングが必修化。うーん、やっぱり生活の前提となる道具のあり方が変わってきているんだ。算盤だって、まだまだ使えるけれど、大きな流れは、好むと好まざるとにかかわらず、これが当たり前になってきてるんだな。そのなかで子どもたちも大きくなっていくわけだよなあ。

 子どもの本は、数十年前のロングセラーが読み継がれていく世界で、長く読まれる作品を目指して作者も編集者も日々頑張っている。けれども、時代に要請され、新しく伝えていきたい知識もあるよなあ。

 あ、そうそう。プログラミングは単にITスキルがあればいいってもんでもなくて、「自分が何をしたいか」のイメージも持たないと前へ進むことができないよね。単なる消費とは違う、創造と表現の世界がプログラミングにはあるんだよなあ。文字を覚えるように、プログラミングを覚えたら、むちゃくちゃ便利で面白いよ。鉄の溶接ができたら、自由にフレームが作れるのと同じようにさ。

「IT社会」と「思考・表現」が交差するところをうまくすくいとって、楽しいしかけ絵本ができたら、すごく売れるんじゃないかなあ。イラストをふんだんに入れてさ。あっ、それは『なるほどわかった コンピューターとプログラミング』のことか。順調に売れているのは、そういう理由なのかな……。
 ソフトバンクホークス対DeNAベイスターズ。「いい流れかも」。

(ひさかたチャイルド 佐藤 力)