
世界への扉をひらく─面白地図しかけえほん
この本の原書を見たとき、何年も前に我が家の子どもたちがイラスト入りの世界地図を楽しんで見ていたことを思い出しました。遠い見知らぬ国の地図も絵があるとぐっとわかりやすくおもしろくなります。さらに、このめくりしかけえほんでは、地図の上にあるたくさんの絵のとびらをめくって、それぞれの国のおもしろい情報を見つけることができます。私はすっかり夢中になってめくり続けてしまいました。
ところが、実際に訳すとなると、たいへんな作業が必要でした。ぎっしりつまった情報が正しいのか確かめ、必要であれば言葉を補い修正しなくてはなりません。距離や面積などの数字も多く、編集者さんと手分けしていくつもの資料にあたりました。めずらしい動物や植物については、日本の専門家の情報をできるだけ探しました。アフリカの部族の伝統的な仮面、アマゾンの果実など、見つけられた日本語と英語の情報だけでは確認しづらく、他の言語の情報と照らし合わせて確かめたものもありました。
禁酒で知られるイランの地図にワインの絵が描かれていたのには、初め疑問を感じました。けれども調べてみると、古代のイランではワインが好まれていたとわかり、歴史の流れを感じさせられました。
このようなしかけえほんで苦労するのは字数制限です。固有名詞など、カタカナの言葉はもとの英語よりもはるかに長くなる場合が多いのです。とくにめくる部分のスペースはとても小さく、必要な情報を入れることがむずかしくなります。私は海外在住のため直接デザイン担当者と調整を行いにくく、東京の友人、翻訳家の高橋美江さんに協力していただきました。
翻訳作業を進めていた最中に東日本大震災が起こりました。この本に関わるまであまり知らなかった国々からも、支援や見舞いの言葉が日本へ届けられ、強い絆を感じました。この絵本を通じてひとりでも多くの子どもたちが世界に興味をもってくれたらと、願わずにはいられません。
(なかいがわ・れいこ)●既訳書に『金融ハルマゲドン』『BONES骨は語る オフィシャルガイド Season2』(共に共訳)など。
大日本絵画
『世界の七大陸 ぐるっと大冒険』
ジェニファー・マッピン・絵
中井川玲子・訳
本体1,600円