日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『お?かお!』 ひらぎみつえ

(月刊「こどもの本」2017年8月号より)
ひらぎみつえさん

顔を動かして遊ぼう!

 娘がまだ赤ちゃんの頃、見つめ合っていると小さな手でよく顔をいじられました。娘は真剣そのもの。これは何だろう? ここをつねるとどうなるかな? と実験をしているようでした。唇をめくってみたり、鼻をつまんでみたり、小さな爪を頬骨にグッと突き刺そうとしたり……。「イタタタ! それはやめてね。」と笑う私に、娘も嬉しそうに微笑み返してくれたものです。

 しかけ絵本『お?かお!』は、そんな思い出をヒントに発想しました。顔を自由に動かして、表情の変化を楽しめます。まゆげを上げてキリッ! 下げてショボーン。ベロを引っぱってあっかんべえ! まぶたを閉じておやすみなさい……。顔の輪郭はあえて描かず、ページいっぱいを一つの顔としました。絵本そのものを四角い友達のように感じて欲しいです。

『お?かお!』を含めシリーズ三冊が同時刊行されましたが、いずれの絵本もペーパーエンジニア坂啓典さんの緻密な計算により丈夫さとスムーズな動きを実現していて、子供が自分で動かせる喜びを満喫できます。『でんしゃガタゴト』は、自分で電車を動かして駅を出発しトンネルをくぐって旅をすることができます。人気は車両基地の場面。「車庫に入りまあす!」と車両を基地に入れたり、また出発させたり、このページだけで永遠に遊べます(笑)。『あかちゃんみーつけた!』は、動物の親を動かすと隠れていた赤ちゃんがぴょこっと出てくる、かわいい絵本です。

 先日、絵本売り場を柱の陰からそうっと観察したときのこと。『お?かお!』で遊んでいる男の子を発見! しばらくカチャカチャ遊んだのち、私の熱い視線に気付いたようでした。すると、男の子は「こんなのできたよ!」と言うように、完成したヘンテコリンまゆげを私に見せてくれたのです。またいろいろ動かして「見て! こんな顔もできた!」と何度も絵本を掲げて見せてくれました。そのときの私の嬉しくて舞い上がった顔も、負けず劣らずヘンテコリンだったことでしょう。

●既刊に『クリスマスパーティはじまるよ!』『サンタさんどこにいるの?』など。

『お?かお!』
ほるぷ出版
『お?かお!』
ひらぎみつえ・作
本体850円