
フクロウさんの蔵書
絵を描くという作業が好きです。絵本のお話の展開的には描かなくてよさそうなものまで画面にこっそり描き込むのが大好きです。そんなわたくしですが、今回の作品は本当に、いつにも増して細かかった……。
絵本の舞台は森のフクロウさんの家の図書館です。主人公の本を愛するフクロウさんは大変な蔵書家で、家の壁が窓とドア以外すべて本棚。これは描きがいがあるぞ! と腕まくりしつつ、わくわくと描きはじめました。
「本」は中の本文はもちろんですが、装丁も大きな魅力の一つです。
本屋さんや図書館で、装丁を眺めながらうろうろと楽しんでいることもしばしばです。
美術館や博物館で見る、古い革の表紙にケースまでついた立派な本は、もういない昔の職人さんや歴代の所有者の姿まで本の中に詰まっているようです。
今回描いた絵本に出てくるのは髭のフクロウさん。彼の蔵書は古い渋めの本がそろっていそうだなぁ……と思いながら描きました。
背景がほとんど本棚なので背表紙を果てしなく描くことになります。最初の室内を描き終わり、二枚目の作画。ここから予期せぬ苦労が始まりました。
背景の本棚はストーリー上、時系列が同じシーンなら全く同じ位置に同じ本が並んでいなければいけません。あれ? この窓の横の本棚の下から三段目の棚には左から五冊茶色の背表紙が並んで、その横には緑にひし形背表紙が……? このドアの上にはこの本が……。あれ? この角度だと玄関ドアから右に二枚目の窓の左の本棚になるのかな……? と、まるでパズルをやっているような……。ストーリーとは関係ありませんが、そんなあたりもよければお楽しみいただけますと嬉しいです。たぶんほとんどの本は矛盾なく並んでいると思います。もし違っていたらきっと読んだ森の動物たちの誰かが返す棚を間違えたんだな、ということで。
(ふくざわゆみこ)●既刊に『もりのホテル』『ぎょうれつのできるレストラン』『もりいちばんのおともだち』など。
学研プラス
『もりのとしょかん』
ふくざわゆみこ・作・絵
本体1、300円