日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『マーサとリーサ 花屋さんのお店づくり、手伝います!』   たかおかゆみこ

(月刊「こどもの本」2017年3月号より)
たかおかゆみこさん

ステキなふたごがお悩み解決!

 自宅から三十分ほど車を走らせると、瀬戸内海に面したこぢんまりとした港にでます。四国にわたる大きな橋ができて以来、いささか活気のうすれた感のある港ではありますが、晴れの日の多い温暖な気候と、ちいさな島々がぽんぽんとうかぶ青い海は、地中海のそれを彷彿とさせます。

 むかしから慣れ親しんだこの港町と、写真でしか見たことのない遠い外国の港町のイメージがあわさって、ふたごの姉妹マーサとリーサが住む港町になりました。

 冒険家のお父さんとの旅暮らしのおかげでDIYが大得意のふたごが、港町のひとびとの心にあたたかな風を巻きおこしていく「マーサとリーサ」シリーズも、このたび三冊目を出させていただくことになりました。読み物ではありますが、お話がすすむ中で、ふたごの手によるちょっとした小物の作り方を紹介しているのも、このシリーズの特長です。

 ちいさな読者から届く「つくったよ!」という声は何にもましてうれしいものです。わが家の娘も小学生のときから工作が大好きなのですが、こどもたちの創作熱はいつも突然で、はやくしないと急にしぼんでしまいます。この本の中でも、紹介するDIY工作は、できるだけ身近ですぐに材料のそろうものをこころがけています。

「ステキなふたごが港町のひとびとのお悩み解決!」というテーマを描く一方で、現実の悩みはそうたちどころに消えるものばかりではありません。それはこどもの世界でも同じです。

 それでも、この本を手にとってくれたこどもたちが、空きビンにリボンをむすんで、ふだんは見過ごす道端の小さな草花を入れてかざってみたら、なんとなく世界がちがって見えることもある、ということを感じてくれたら、こんなにうれしいことはありません。

 絵を描く前にロケハンにでかけると、浜辺や岩場のかげにマーサとリーサが見えかくれします。そんな、本の中のもうひとつの世界を共有してくれる読者の存在は、わたしの宝物なのです。

(たかおかゆみこ)●既刊の挿絵作品に『エレベーターは秘密のとびら』『学校の鏡は秘密のとびら?』(以上、三野誠子/作)など。

「マーサとリーサ 花屋さんのお店づくり、手伝います!」
岩崎書店
『マーサとリーサ 花屋さんのお店づくり、手伝います!』
たかおかゆみこ・作・絵
本体1、200円