日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『おばけのばけひめちゃん』 高山栄子

(月刊「こどもの本」2016年10月号より)
高山栄子さん

いろいろな友達

 はじめての友達を覚えてますか。
 私は多分、幼稚園のきょうこちゃんです。いつもくっついて遊んでいたのに、私の石頭がぶつかって、鼻血だらだらで泣かせてしまった……何十年たっても忘れない思い出です。
 この本にも、はじめて友達になる、ふたりの女の子がでてきます。
 ひとりは、ばけひめちゃん。
 おばけの、おひめさまです。
 まだ小さくて、元気で、好奇心いっぱい。でも、まわりには、遊ぶ友達がいないのです。おばけ山のおばけ城から、人間の町を眺めては、「どんなところかなあ」と、わくわくしています。
 ある日、「人間の子と遊びたい!」と、遠足にとびだすけど……なかなか大変。
 もうひとりは、アンナちゃん。
 人間の女の子です。
 みんなとわいわい遊ぶのが苦手で、いつもすみっこで、ひとりぼっち。クラスの子には、「暗くておばけみたい」と、悪口すら言われています。
 でも、無理して人にあわせるよりも、ひとりで遊ぶほうが気楽な性格。散歩が趣味の、ちょっとクールな子です。
 そんな、まったくちがう、おばけと人間の子が、どんな友達になれるのか……それは、本の世界でのお楽しみに。
 この話を書きながら、自分の子供時代が、もやもや浮かんできました。
 暗黒ほど強烈じゃない、薄闇の日々。
 私も、アンナちゃんみたいに、ひとりで遊んだなあ。ばけひめちゃんみたいな、ふしぎな友達ほしかったなあ。
 休み時間、「友達いない子」ってバレないように、廊下をぷらぷら歩きまわったなあ。窓から、遠くの町を眺めて、ちがう世界へ行きたかったなあ。
 今の時代、そんな孤立した子が、さまよっているのかわかりませんが。話しかけたい思いで書きました。みんなと遊ぶ子も、ひとりでいる子も、いろいろな子がいていいんだよね。友達も、いろいろな子が、いるんだよ。
 編集者は、縁の下の怪力持ち、おこひらさんです。キュートで愛らしい、いとうみきさんの絵と、二十年ぶりに再会できました、感謝の一冊です。

(たかやま・えいこ)●既刊に『カボちゃんのひっこし!?』『シュークリーム星のオヒメサマ』「霊界教室恋物語」シリーズなど。

おばけのばけひめちゃん
金の星社
『おばけのばけひめちゃん』
たかやまえいこ・作
いとうみき・絵
本体1、200円