
私の未知との遭遇
週に一回ですが、文庫活動といって、近所の子どもたちと、本を読んだり、折紙をしたり、紙芝居をしたりしています。じつはこの子たちのいうこと、することをもらって、物語作りができないかなあというコンタン(下心?)もあったんですが、うまくいきません。
今の子って、おしゃれでセンスも垢ぬけています。第一、名前からしてテレビタレントみたい。着てくるブラウスの衿はオーガンジーのひらひら。おまけにビーズのバラの刺繍がしてあったり……。「アナと雪の女王」とか「白雪姫」のようです。
やぼなおばさんは、必死。アクセサリー作りなんかしたら、喜んでくれるかと、庭にジュズダマを植えました。秋、貝がらのような白灰色の実がなり、それを糸に通して首かざりや腕輪を作りました。やはり、だめ。子どもたちのセンスにあいません。
「じゃ、お母さんにプレゼントしよう」
「ええーっ、うちのママこんなやぼったいのしない」
こういうずれで、私は書けなくなりました。
私の子ども時代(戦前になります)を思い出し、物語作りをしてみましたが、これも受け入れてもらえません。
そこで思い切って、二百年くらいバックしてみました。私にとって二百年未来と同じ。手さぐり、足さぐりで、未知の世界に入ってみました。そこで松あんちゃんや、おはなちゃん、貧乏神、見越しの入道をはじめとするばけものたちなんかに出会えました。
時々、江戸切絵図を片手に、御徒町や下谷広小路を歩いていくと、家出した白いねこのおたまさんが歩いてくるんです。
目下、私はこの江戸の町歩きを楽しんでいます。
いろんな子ども、おかしな大人、ちょっと変わったばけものたち、へんな事件に出会えます。
(いわさき・きょうこ)
●既刊に『かさこじぞう』『建具職人の千太郎』『街道茶屋百年ばなし 熊の茶屋』など。
文溪堂
ばけもの長屋のおはなちゃん
『大さわぎ! ばけもの芝居と白いねこ』
岩崎京子・作
長谷川義史・絵
本体1、300円