
ひろげてあそんで!パノラマえほん
高速道路そのものに注目した絵本というのはあまりなかったのではないでしょうか。本来は高速で流れて行ってしまうものなので、あらためて観察してみると知らないことばかりでした。絵にしてみると、意外と見ているようで見ていないことに気が付きます。運転している大人は標識と前のクルマくらいしか見ていないですね。特に入口あたり。いったいどんな風に高速道路は始まるのでしょう。不用意にクルマで行って、そのまま高速道路に押し流されても困ります。近所にあるインターの入口に、自転車をこいで見に行きました。けっこう一般道の手前からなんとなく街路樹や照明の感じも違っていました。じつは「これからドライブで遠くに行くぞ」な気分があふれていました。やはり特別な道路ではあるようです。絵本の出だしは、そんなことを考えながら作りました。
この絵本はすべて広げると2メートル半以上の長さになります。絵巻風のパノラマ絵は、比較的よく描いているほうだと思いますが、今回の長い一つながりの道路絵は過去最長です。デジタルではなく紙なので、お店で買える水彩用紙の横幅いっぱいでもまだ足りない。3枚をつなげて描いています。高速道路上に2か所つなぎ目があります。そこを分からなくする工夫を考えるのは、ちょっと面白かったです。例えば料金所のゲートのところで切る、とか。(最終的にデザイナーさんや印刷所さんの力は必要となりますが…。)なかなかの挑戦だったと思います。
同時に、初めての年少向け絵本という側面もあります。もうちょっと年長〜大人向けの仕事が多かったので、この部分でも挑戦ではあります。ルポ絵に大人も子供も実はないんですけど、これはいっぱいに伸ばして、お家のミニカーで遊んでもらえたら嬉しい玩具的表現も意識しました。
絵巻様の道路面の裏面は、見開き形式の図解風。結果いつもと同じっぽいですが、紙がつながっているのでノドがない。見開きの真ん中を意識しないで描けて楽しかったです。
(モリナガ・ヨウ)
●既刊に『築地市場 絵でみる魚市場の一日』『図解絵本 工事現場』『新幹線と車両基地』など。
ほるぷ出版
『はしれ! こうそくどうろ ─パタパタえほん─』
モリナガ・ヨウ・作
本体1、200円