
photo by yukoOkoso
めぐみさんからの贈り物
『コトリちゃん』は、絵を描いてくれた、故・やまぐちめぐみさんと出会ったことで生まれたお話。めぐみさんの絵だったらこういうふうに描かれるのかなあ…と想像しながらわくわくして書いたお話です。私が絵本作家になってから二十年ほど、お話だけを担当し、別の絵描きさんに絵をお願いした作品はこれが初めてです。
めぐみさんと出会ったのは二〇一二年のこと。めぐみさんはすでに難病と闘っていました。自由に歩くこともままならぬ状態で、でも毎日精力的に絵を描き、きちんと生活をしているめぐみさんは、とても素敵な女性でした。めぐみさんの絵が大好きになった私は、「この人と絵本をつくりたい!」と思い、めぐみさんに絵を描いてもらうためにお話を書くことにしました。それが、一年に一度だけ目を覚ます小さな女の子、コトリちゃんのお話です。
コトリちゃんは、たった一日しかない時間を、自分のためではなく、悲しんでいる人や寂しい思いをしている人のために使います。コトリちゃんは、めぐみさんに似ているのかもしれません。めぐみさんも、まわりの人たちを喜ばせることをいつも考えている、そんな人でしたから。
ゆっくりと制作を進め、ふたりで絵本ができあがるのをとても楽しみにしていたのですが、残念ながらめぐみさんは、絵を描き終える少し前、昨年の九月に天国へと旅立ってしまいました。
幸い私は絵描きでもあるわけなので、制作途中だった二枚の絵は加筆し、足りなかった最終ページは描きおろすことにしました。全体の展開も改めて見直し、この絵本で伝えたかったメッセージがちゃんと届くよう、文章を少し変えました。でも、その展開だと絵がどうしても足りません。試行錯誤した結果、めぐみさんが過去に描いた作品の中から二枚の絵の一部を使い、『コトリちゃん』はできあがったのです。
子どもから大人まで、いろいろな方にご覧いただきたい一冊になりました。みなさんの心に、めぐみさんからの温かい贈り物が届きますように。
(とりごえ・まり)
●既刊に『ぼくのへやのりすくん』『ロバのポコとうさぎのポーリー』『みにくいあひるのこ』など。
佼成出版社
『コトリちゃん』
とりごえまり・さく
やまぐちめぐみ・え
本体1、300円