日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『大江戸ヒーローズ!!』 奥山景布子

(月刊「こどもの本」2016年6月号より)
奥山景布子さん

語り継ぐ、人と歴史

 正直に言うと、創作活動を始めた頃は、自分が児童書を書くことになろうとは、全く考えていませんでした。
 でも、みらい文庫担当のIさんから「奥山さんは、世代を超えて渡したいものをたくさん持っているでしょう?」と言われて、目からうろこというか、大げさに言うと「ああこれは天命だ」ぐらいの発見がありました。
 以前は教員をしていたので、友人には今も教員が多いのですが、「ディズニーやグリムの物語はたくさん知っているのに、日本の歴史や物語を知らない子がかなりいる」との嘆きを時折聞きます。それはあまりにももったいない。歴史でも物語でも、日本にはおもしろい「お話」が本当にたくさんあります。それらに興味を持ってもらうきっかけにしてほしいと願いながら、お仕事をさせていただいています。
「読みたい本として〝伝記〟をあげるお子さんは少なくない」とIさんから教えてもらいました。ならば、一人の人物のお話だけでなく、歴史上の背景や、他の有名人物との関わりなども合わせて読める、欲張った本を作ろうということで、一冊で何人もの人生を知ることのできる「ヒーローズ!!」シリーズが始まりました。
 幸い、既刊の『戦国ヒーローズ!!』『幕末ヒーローズ!!』は、多くの読者を得られたようで、熱のこもった、時にイラストまで入った、うれしいお手紙が届きます。子どもたちの「誰々のこんなところが好き」をたくさん教えてもらったので、それを生かして、今度は江戸時代から七人を選びました。
 宮本武蔵、天草四郎、徳川光圀、大石内蔵助、大岡忠相、長谷川平蔵、大塩平八郎。これら『大江戸ヒーローズ!!』の顔ぶれは、大人にとっては、「時代劇」に出てくる人物としておなじみの面々です。RICCAさんが描いてくれた素敵なイラストを見ながら、読者の子どもたちが、ご両親や先生、おじいちゃんおばあちゃんなど、様々な世代の人と、感想を話し合って、楽しい時間を過ごしてくれたらうれしいなと、心から祈っています。

(おくやま・きょうこ)
●既刊に『千年前から人気作家!!清少納言と紫式部』『日本の神さまたちの物語 はじめての「古事記」』など。

『大江戸ヒーローズ!!宮本武蔵・大石内蔵助……信じる道を走りぬいた7人!』
集英社(みらい文庫)
伝記シリーズ
『大江戸ヒーローズ!! 宮本武蔵・大石内蔵助……信じる道を走りぬいた7人!』
奥山景布子・著 RICCA・絵
本体700円