
学校でおこる小さなドラマ
この物語は、放送委員に選ばれた女の子と男の子が、「お昼の放送」を通して心を通わせていくお話です。
実は、創作のきっかけになったのは、私の娘のおしゃべりでした。
当時、小学生だった娘は、学校でのできごとを、モノマネを交えながら上手に再現するのが日課でした。
ある日、娘は「放送委員になった!」と大喜びで学校から帰ってきました。念願のお昼の放送を担当することになり、とてもはりきっている様子です。
ところが、いざ放送が始まると、内容をめぐってペアを組んだ友達と対立したり、原稿を忘れてアドリブで放送したり、音量のつまみがぽろりととれたり、毎週のようにマンガのようなハプニングが起こります。
かと思えば、クラスメートから思わぬ反響があったと、自慢げに報告することもありました。
「へえ、放送委員ってなんだか楽しそう!」と娘の話を聞きながら、私の頭の中には、突如、遠い昔の学校生活がよみがえりました。
そうそう、学校って本当にいろんなことが起こるんだよなあ、と懐かしい気持ちでいっぱいになったのです。
もちろん、今も昔も、学校は楽しいことばかりではありません。
ちょっとした仲間はずれだったり、苦手な給食の酢豚だったり、とべないとび箱だったり。暗い気持ちで「明日、学校に行きたくないなあ」と思ったこともあったはずです。
でも、そんな憂鬱のタネといっしょに、宝物のような楽しい瞬間がごろごろ転がっているのが、学校というところだったっけ。
とりわけ、「絶対にこの子とは気が合わない!」と思っていた友達と、ふと心が通じた時の驚きとうれしさといったら。ああいう奇跡は、何十年たっても忘れません。
あの頃、日々おこっていた小さなドラマは、すっかり大人になってしまっても、ふいにひょっこり顔を出して、その人を勇気づけてくれるような気がします。
(のりまつ・ようこ)
●本書が初の著作。
ポプラ社
『お昼の放送の時間です』
乗松葉子・作
宮尾和孝・絵
本体1、200円