日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私がつくった本68
ひかりのくに 窪田 愛

(月刊「こどもの本」2015年12月号より)
つくろう・たべよう フルーツパンケーキ

つくろう・たべよう フルーツパンケーキ
さか井美ゆき/絵

2015年11月刊行

ひかりのくに 窪田 愛

 この記事を読んでくれているそこのあなた! クイズです。この絵本の絵は何の画材で描かれているでしょうか? ―正解は…なんと、糸です! 見て下さい、この果物のみずみずしさ! シロップの艶っぽいとろみ! パンケーキのふんわり感! 糸で、ここまで表現できてしまうなんて、すごいと思いませんか?
 私が初めて、さか井美ゆきさんの作品を見た時の印象は「濃密」でした。原画は、糸がこんもりと織り重なり、厚みが5ミリ近くになっている箇所もあります(!)。何種類もの糸が混ざり合って立体的に描かれた食べ物は実物と見間違うほどにリアルで美味しそう。絶大なる存在感を放つその絵に、すっかり魅了されました。
 この絵の魅力をどうしたら活かせるか? 企画を考えた時になんとなく「布地に刺繍でデコレーションする感覚」と、「パンケーキにフルーツでデコレーションする感覚」が近いような気がしました。(食べ物にもかわいさを追求する乙女心みたいなものでしょうか…?)というわけで本のテーマを「パンケーキのデコレーション」にしました。子どもたちが大好きなパンケーキに、ふわっとろのクリームを塗り、たっぷりの果物やトッピングで華やかにする。女の子ならきっとワクワクしてくれるはず! と思ったのです。
 また、見た目だけにこだわるのではなく、絵本としてちゃんと遊べるようにも工夫しました。「キウイを きろう とん とん とん みどりが きれい」のように、調理をしている感覚になれる言葉がけをしたり、デコレーション用の果物は、子どもたちがつまむ真似をして遊べるようにひとつまみのサイズにカットしています。こうしてできたパンケーキはタワーのように高く積み上げられ、果物はこぼれ落ちるほどに盛り盛りの力作です! さらに秘密のサプライズまで用意されているんですよ!(どんなサプライズかは、お手に取ってご覧下さい!)
 このように、糸の1本1本までこだわって作った絵本です。見て下さった方にかわいい! 美味しそう! と感じていただけたら嬉しいです。
〈おまけ〉上司がこの本を見ながら、お孫さんと一緒にパンケーキを作ったそうです。すぐに揃えられる食材だったし、手順も簡単(のせるだけ!)な割に見た目が豪華なので、ものすごく大満足だったよ! とのことでした。そして、この本を読む度に、「じいじ、また一緒に作ろうね♪」と言ってくれるので嬉しい! と言ってくれました。本を作っていてこういうエピソードに出会えるのは、本当に幸せな限りです! 本を作って下さったさか井さん、デザイナーさんなどたくさんの方々、本当にありがとうございます!