日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ぜったい くだものっこ』 たかどのほうこ

(月刊「こどもの本」2015年12月号より)
たかどのほうこさん

個性豊かな〈くだものっこ〉の日常

  ぽてっとした可愛い女の子はモモみたいだし、あごのしゃくれた細面の人はバナナみたい。毛の薄い痩せたおじいさんは、どう見てもサトイモ……。それに、ごろんとした夏ミカンがあれば、つい目鼻を描きたくなってしまう。野菜や果物って、何となく人間に似てますよね?
 そんな思いから生まれたのが、果物の子どもたちが主人公のこのお話です。みんなは〈青田くだもの店〉の店先から―つまりお店の商品なのです―朝、ちょこちょこ抜け出して学校に行ったあと、お店にもどらず、青田さんの家の一室にもうけられた学童保育〈くだものっこ〉に向かいます。学童を主催しているのは青田さん、ではなくて飼いねこのタマです。だって人間の目を隠れて存在する、こそこそした世界なのですから。
 生徒は、パイナップル、バナナ、ナシ、モモ、リンゴ、ミカン、キウイ、イチゴの八人。売れてしまうことも腐ってしまうこともけっしてないという、徹底的に現実離れしたこの子たちが繰り広げる、とても現実的な日常生活を描いたお話です。
 堂々と自慢してしまいますが、これはたいそう面白い本だと思います。何しろ絵が抜群! 文字で書いた世界を見えるようにして下さる、つちだのぶこさんのセンスには本当に驚かされます。人間みたいに暮らしてる果物の子どもたちって、そうか、つまりこんな感じだったのか! と、お話を書いた私が納得させられてしまうのです。本当にはいない子たちだなんて到底思えないほど、ひとりひとり、生き生きと個性的に描きだされ、可愛いったらないのです。
 この本では、イモ掘りに行ったり―親戚筋にあたるようなサツマイモを掘るなんてシュールすぎなのに、これがふしぎと自然―ウィーン少年合唱団の代わりを務めたりと、秋らしい生活が描かれます。でも、年を越え、季節を越えて学童はつづき、子どもたちは、ますます活躍しつづけます。〈くだものっこ〉のシリーズをどうぞお楽しみに!

(たかどのほうこ)
●既刊に『ルゥルゥおはなしして』『つんつくせんせいとかさじぞう』『おーばあちゃんはきらきら』など。

『ぜったい くだものっこ』
フレーベル館
『ぜったい くだものっこ』
たかどのほうこ・作
つちだのぶこ・絵
本体1、000円