こどもの本

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「こころのほんばこ」シリーズ 大日本図書

(月刊「こどもの本」2021年9月号より)
「こころのほんばこ」シリーズ

自分らしくいきいきとした主人公たち!

小宮 由 訳
2015年11月~刊行

 このシリーズは、翻訳家小宮由さんの数ある蔵書から、幼年童話にぴったりな本を選び出すという何とも楽しい作業から始まりました。原書を拝見している時の幸せな時間を思い出すと、今でも心が躍ります。

 小宮さんは家庭文庫を主宰されていて、日々、子どもたちに本を手渡す最前線の方でもあるわけですが、積極的に紹介したい幼年童話が少ないと感じられていました。「ならば、つくってしまいましょう!」ということでスタートし、現在は11冊になります。

 それぞれ著者が違う作品なのですが、どれにも共通すること、それは、主人公がみな、いきいきと自分らしくふるまっていることなのではないかな、と思います。1作目の『ハリーとうたうおとなりさん』では、主人公の犬ハリーが、おとなりさんのうるさい歌声にたえられず、大人にはおよそ思いもつかない方法で、あれやこれやと試みます。『ウォーリーと16人のギャング』では、ちいさな男の子が、おくすることなくギャングたちに挑みます。その作戦は痛快で、また、ギャングたちの憎めないこと! 他にも「はらへった!」となんでもかんでもお構いなしに飲み込んでしまう土偶や、字がよめなくてもどこ吹く風な男の子(でも、あるきっかけで本の虫に!)などなど。

 主人公たちが繰り広げる良質なお話、そして原書の世界を損なうことなく、しかし滑らかな文体での翻訳が、主人公たちにすっかり心をかさねることを可能にします。また、初めて1人読みをする子が楽しく読み進められるよう、文字の組み方や大きさにも、気を配りました。そのかいがあって、「本を読むのが苦手な息子も楽しく読んでいました」とか「娘が図書館で借りて気に入って自分の本にしたいというので購入しました」とか「絵本から読み物にうつっていく子にぜひ手渡したいです!」なんていう感想も届きました。

 弊社では、「こころのほんばこ」シリーズを刊行する前に、幼年童話の「ゆかいなゆかいなおはなし」シリーズと「ぼくはめいたんてい」シリーズを新装版として刊行しています。初版の発行は今から40年ほど前になりますが、古びることなく、こちらにもうれしい感想をいただきました。その流れを絶やすことなく、読者がよいと言ってくださるところを生かして刊行できたことも、着実に版を重ねられる要因になっていると思います。

 子どもたちが読書を通して様々な体験ができるよう、これからも楽しい本をつくっていきたいと思います。

(大日本図書 山本陽子)