こどもの本

私の新刊
『としょかんのきょうりゅう』 鈴木まもる

(月刊「こどもの本」2021年9月号より)
鈴木まもるさん

不思議な世界への入り口

 子どものころから恐竜が好きでした。絵本作家になりましたが、恐竜の絵本は描く気になりませんでした。色がわからないからです。化石で骨格はわかっても色がわからなければ、模様も何も描くことができません。まして最近は、羽毛がある恐竜がいたことがわかり、どのような形態をしていたのか、いろいろな可能性も広がり、余計に恐竜の絵本を描くことへのハードルが自分の中で高くなりました。

 でも今回、恐竜を描こうと思ったのは、ゲームや怪獣映画で、いつも血に飢えて暴れまわっているような恐竜が、多すぎる感じがしたからです(変に擬人化しすぎているのもあるし)。もちろん、ぼくも実物を見ていないのでわかりませんが、地球上に生きる生物として、今の動物と同じような行動もしていたと思うのです。例えば、よく映画などで、ガオーと叫んで敵を襲うような場面がありますが、ライオンなどを見ても、そんなことしていたら逃げられちゃうから、するわけがない。いつも闘ってばかりいたわけでもないでしょう。もちろん、繁殖期にオス同士が闘うことはあるでしょうが、力の差がわかれば、必要以上に闘いを続けはしないでしょう。そして恐竜も、動物と同じように、自分の子どもを大切に守ったでしょう。それで、読者に、生物としての恐竜を感じてもらえるような絵本を描きたいと思いました。

 ぼくは、子どものころから図書館も好きでした。勉強は全然できない子でしたが、薄暗い本棚にたくさんの本が並んでいる空間は、知らない世界へ通じる秘密の入り口のようで、読めない字や異国の写真や絵を見るのが大好きでした。そんな薄暗い図書館で、主人公の子どもがある本のページをめくると、本の中は恐竜の世界が広がっているというところからお話は始まります。読者も主人公といっしょになって、ページをめくりながら恐竜の世界に迷い込むという作りになっています。世の中には電子書籍もありますが、綴じた紙をめくるという、紙の本ならではのワクワクした不思議な世界に迷いこめる子が増えることを願っています。

(すずき・まもる)●既刊に『なにしてるの?』『あるヘラジカの物語』『せんろはつづく』(竹下文子/文)など。

『としょかんのきょうりゅう』"
徳間書店
『としょかんのきょうりゅう』
鈴木まもる・作・絵
定価1,760円(税込)