日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私がつくった本65
鈴木出版 田村遊子

(月刊「こどもの本」2015年8月号より)
はみがき あわこちゃん

はみがき あわこちゃん
ザ・キャビンカンパニー/作・絵
2015年7月刊行

 今、人気急上昇中の絵本作家といえば、ザ・キャビンカンパニー。大分県在住の阿部健太朗さんと吉岡紗希さんのユニットです。デビュー作『だいおういかのいかたろう』で第20回日本絵本賞読者賞(山田養蜂場賞)を受賞し、その後も、続々と新刊を出しています。

 おふたりの最新作『はみがきあわこちゃん』は、あわこちゃんが歯みがきをしていると歯みがきの泡が口からもこもことあふれ出すお話です。ピンクの色づかいがとてもキュートな絵は、思わず泡を触ってみたくなります。とにかくかわいくて、女の子が思わず手に取りたくなるような本が作りたかったというザ・キャビンカンパニーのおふたり。きれいなピンクの色を印刷で出すのは大変な作業でしたが、満足のいく仕上がりになってとてもうれしいです。

 このおはなしのラフをもらったとき、とても楽しい気持ちになりました。歯みがきが嫌いだったり苦手だったりする子どもたちが、進んで歯みがきをしてくれるんじゃないかと思ったのです。この本が歯みがきの時間を楽しくしてくれることを祈って作りました。

 制作するにあたり「チームあわこ」というチームを結成しました。ザ・キャビンカンパニーのおふたりと編集担当の私、それと社内の勇姿を募ってチームは結成されました。社内にもザ・キャビンカンパニーのファンが多く、こんなに愛されて作られる本もなかなかないと実感しています。おふたりの人柄が私たちを突き動かしているんだな〜としみじみ感じています。大分県と東京でなかなか会えない距離だからこそ、連絡を密にとっていました。

 ところで、おふたりと私の共通点は、海と魚が好きなこと。前作の『だいおういかのいかたろう』もイカが主人公でしたが、今回も海が出てきます。おふたりと一緒に大分の水族館でいろいろな魚を見て研究しました。取材という名の観光だった気もしますが(笑)、さまざまな魚を見て海のイメージが広がったようです。阿部さんの好きな魚は「クエ」だそう。本書では、クジラが海の水を吸い込むページにピンク色のクエが出てきます。 

 絵の特徴といえば大きなベニヤ板に絵を描いていることです。原画が送られてきたときは、その大きさと重さに驚きました。描き方も珍しく、下地を塗った板に型紙を貼っていき、その上に重ねて色を塗ることで、型紙をはがしたときにその部分だけ色が残るという手法をとっています。

 また、このおはなしには「あわこちゃんのはみがきマーチ」という曲がついているので、ハミングしながら歯みがきをすると楽しいです。でも、大きな口を開けて歌うと、泡が口からあふれちゃうので注意が必要ですよ!