日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『のねずみポップはお天気はかせ』 仁科幸子

(月刊「こどもの本」2014年2月号より)
仁科幸子さん

空の色、雲の形、風のにおい…天気予報をしてみたら!

 東京から山梨の田舎に戻って、十年になる。私は植物や木が本当に好きで、小さな庭でハーブや植物を育てている。疲れると庭に出て、草むしりや植物の世話をすると、まるで生き返ったように元気になる。冬の寒い朝、カチカチの大地を盛り上げ、霜柱が日の光に輝く姿などは、都会では決して味わえない美しさだ。自然に触れることは私にとって、大事なインスピレーションの源になっている。

 田舎で植物を育てるようになって、一日の天気を気にすることが増えた。空を見上げ雲の様子を見て、植え替えるかどうか? と悩んだりする。

 私の父はここ二十年間、天気ノートを作り、毎日の天気や気温を、細かく記録している。結構それが役に立っていて、真冬になると父に明日の最低気温を聞き、蛇口が凍らないように少し水を出しておいたりする。

 そんな生活の中で、『のねずみポップはお天気はかせ』の物語が生まれた。天気予報士だった、ポップのお母さんの残したお天気ノートを研究し、季節はずれの台風を予測したポップのお陰で、森のみんなが助かるというお話だ。

 天気の予報には、昔からの言い伝えが多く残っている。例えば、台風の多い沖縄には、トンボが群がって飛べば台風が来る、ウミガメが白浜に産卵すると大風が吹く、ウミヘビが水面に浮遊すれば台風が多い、サトウキビの茎根が高く伸びたら台風が来る……など、雲や風の変化と同様、虫や動植物の行動により台風が来ることを知らせる伝承が残っているが、これも生きる知恵と思う。

 私はよく野ねずみを主人公にするが、東北の田舎で子どもの時期を過ごした私には、家によく現れる野ねずみは、今思うと友だちのように身近だった。

 自然に生きる小さな命も、みんな人間と変わらない尊い命で賢明に生きている。この本を読んで、自然に生かされていることや、昔からの知恵の大事さを考えてくれたらと思う。

 子どもたちがポップのように空を見上げ、自然を感じる機会が増えたら、とても嬉しい。

(にしな・さちこ)●既刊に『そよそよさん』「ハリネズミとちいさなおとなりさん」シリーズなど。

「のねずみポップはお天気はかせ」
徳間書店
『のねずみポップはお天気はかせ』
仁科幸子・作・絵
本体1,400円